2022 Fiscal Year Research-status Report
高次元Hawkes過程の統計解析手法の確立とその金融時系列データへの応用
Project/Area Number |
21K13271
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤森 洸 信州大学, 学術研究院社会科学系, 講師 (50822110)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 高次元時系列 / スパース推定 / 整数値時系列 / Hawkes 過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度学術雑誌に投稿した、高次元定常時系列に対するスパース主成分分析に関する論文において、最大固有値、次元、サンプル数の関係に関する考察を進め、改訂を行った。また、そこで得られた成果を国内外の学会にて講演した。この研究は時系列の平均が既知であるという状況で議論しているが、平均の推定を考慮した形で議論を進めることができれば、本研究課題の対象であるHawkes過程、あるいは整数値自己回帰モデルを含む設定で適用しうる。現在、Hawkes graph をはじめとするグラフ構造の解析などを扱うためにより広範な対象を含む行列値時系列に対する統計的推測手法の研究に着手している。 また、整数値自己回帰モデルに対する推定問題の研究にも前年度に引き続き取り組んでいる。特に、整数値自己回帰モデルを例に含むエルゴード的な時系列モデルに対するスパース推定の研究に着手しており、Dantzig selector 型の推定量の漸近的性質を数学的に導出することに成功している。この結果を応用することで、Hawkes 過程を離散近似する整数値自己回帰モデルにおけるオーダーの選択、あるいは、Hawkes過程の自己励起関数の台の推定を考えることができると考えている。現在、それらの応用を含む形で成果をまとめ、論文を執筆しており、得られた成果は、2023年の8月以降の学会(EcoSta 2023他)にて講演する予定である。今後は、前年度から取り組んでいる無限分散を含む整数値時系列の研究成果や、スパース推定、主成分分析の研究成果を多次元Hawkes過程及び多次元整数値自己回帰モデルに適用することを目標としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の核である、多次元Hawkes 過程の離散近似に関する研究は、定常なケースについては近似の数学的な保証及び、推定手法の研究成果がまとまりつつあるが、非定常なケースの理論証明が完了していない。 一方、一次元のHawkes過程の離散近似を念頭に置いたモデルに対するDantzig selector 型のスパースな推定量の提案と、その漸近的性質の導出には成功しており、多次元への拡張も十分可能であると予想している。また、提案手法は線型な最適化問題で記述することができており、今後数値シミュレーションや実データ解析を行う上での利点を十分に含んでいると考えられる。 無限分散を含む整数値時系列のモデリングや推定手法に関する研究も進行しており、当初の予定よりも広範なモデルを念頭に置いた統計理論を展開することができると予想している。以上のように、統計的推定理論の部分については、概ね予定通り進行している。 前年度までに得られた高次元時系列に対する主成分分析に関する研究を、行列値時系列に拡張する研究にも着手している。いくつか解決すべき問題は残ってはいるものの、この研究成果はHawkes グラフなど、自己励起構造のグラフ表現の推定への応用が可能であると考えている。 以上のように、統計的推測問題に関する研究は概ね予定通り進行しているものの、非定常なHawkes過程の整数値時系列モデルによる離散近似の理論証明といった基礎的な部分に関する課題は未解決である。従って、進捗状況を「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
定常な多次元Hawkes過程の、多次元整数値自己回帰モデルによる弱近似に関する結果を、局所定常なケースに拡張する研究に着手する。現在までの研究から、従来までに提案されている局所定常なHawkes過程とは異なる形で結果を与えることができると予想されており、この理論結果を厳密な形で与えることができれば、十分な新規性が得られると期待している。 さらに、高次元整数値時系列に対するスパース推定に関する研究、無限分散を含む整数値時系列に対する推定問題に関する研究にも着手し、Hawkes 過程を含む広範な計数過程及び、整数値時系列モデルの「高次元」の設定で「ロバスト」な推測を可能にする推測理論を展開することを目標とする。 また、高次元時系列に対する主成分分析や、行列値時系列に対する推測理論に関する研究成果と併せることで、Hawkes graphの推定問題への応用にも着手し、得られた成果を金融時系列データ解析に応用していくことを目標とする。
|
Causes of Carryover |
初年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響や、学内業務との兼ね合いもあり、特に海外の研究者との研究打ち合わせ、意見交換を行うための出張を行うことができず、海外旅費として使用することができなかったことが次年度使用額が生じた主たる原因である。 本年度は、オーストラリアで行われる学会(IMS-APRM)への参加を検討しており、申し込みを済ませている。また、状況に応じてその他の国外で行われる国際学会や、整数値時系列や計数過程の専門家を訪問することも検討している。また、引き続き、国内で行われる学会やシンポジウムには積極的に参加することを計画している。
|
Research Products
(6 results)