2022 Fiscal Year Research-status Report
時間情報を持つ大規模空間データのための高速統計解析
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21K13273
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
平野 敏弘 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (10816010)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空間統計学 / 多重解像度近似 / 時空間統計 / 大規模時空間データ / 状態空間モデル / カルマンフィルタ / クリギング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,時間情報を持つ大規模空間データに対する新しい高速統計解析手法の提案とその理論的性質の導出である.今年度は,「大規模時空間データに対する線形射影を用いた多重解像フィルタ」の研究に取り組んだ. 時空間データを線形・ガウス状態空間モデルで表現した場合におけるカルマンフィルタは,各時点で大規模空間データが観測されている場合,計算時間が非常に大きくなる.この問題に対処するために,昨年度,カルマンフィルタの予測共分散行列に線形射影を用いた多重解像度近似を適用することによってフィルタリング平均を高速計算可能なアルゴリズムを導出した.今年度は,まず提案アルゴリズムの理論的性質を明らかにした.具体的には,グラフ理論を利用することにより,提案アルゴリズム中のいくつかの行列のブロックスパース構造が全時間区間を通じて保たれていることが示された.結果として,提案アルゴリズムの計算量が導出され,カルマンフィルタより計算量が小さくなっていることが確認された.さらに,拡張カルマンフィルタとラプラス近似を用いて,提案アルゴリズムを非線形・非ガウス状態空間モデルの場合に拡張できた.この拡張により,土壌水分量や交通量のように正値,もしくは整数値をとり,非線形性を持つ時空間データのフィルタリングを扱えるようになった.また,非線形・非ガウス状態空間モデルにおいても前述した理論的性質が成立していることが明らかになったため,拡張された提案アルゴリズムはフィルタリング平均を高速計算可能であることが示された.様々なシミュレーションや降水量を用いた実データ分析を通じて,先行研究に対する提案アルゴリズムの有効性を確認した.また,国内の学会,国際学会で当該研究を発表し,頂いたコメントを反映させて研究内容を改善した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,大規模時空間データを非線形・非ガウス状態空間モデルとして表現した場合の高速フィルタリング手法を提案できた.提案手法は時間情報・非定常性・非ガウス性・非線形性に対応できており,研究実施計画に記載した目標を達成しているため,研究計画はおおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
1つ目の研究課題「線形射影を用いた多重解像度近似の改良」と2つ目の研究課題「大規模時空間データに対する線形射影を用いた多重解像フィルタ」の研究成果を論文としてまとめて投稿する. また,研究実施計画の3つ目のテーマである「周期性を持つ多変量カウント時空間データに対するベイズ的テンソル補完」について,時間方向の周期性のモデリングや多変量カウント時空間データのベイズ推定に関する先行研究を調査し,検討を行う. 最後に,研究実施計画には記載されていないが,2つ目の研究課題に取り組む中で発見された関連テーマである「大規模時空間データに対する線形射影を用いた多重解像スムーザ」について検討を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額については,1つ目の研究課題である「線形射影を用いた多重解像度近似の改良」の研究成果を論文にした際の英文校正に使用する予定だった.しかし,「研究実績の概要」に記載したように,2つ目の研究課題「大規模時空間データに対する線形射影を用いた多重解像フィルタ」に大きな進展がありそちらに時間を割いたため,1つ目の研究課題の論文化は次年度にまわすことになった.
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