2021 Fiscal Year Research-status Report
空間経済学による情報伝達が人的資本形成に与える影響に関する研究
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21K13285
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
福村 晃一 香川大学, 経済学部, 准教授 (20846349)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 租税競争 / 地域経済学 / 人的資本 / 評価 / 情報の非対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報の非対称性と人的資本蓄積との関連を地域間の相互作用も含めて分析する研究について、今年度は主に次の作業を行った。 地域の企業がすべて同質な労働者の生産性を雇用して、生産を行っている状況を考える。そこでは、地域間を自由に行き来できる労働者の能力を各地域の企業が完全に引き出すことができず、企業の生産性に関して不確実性がある状況を想定している。そういった中、企業側が学習などを通じて、生産性の不確実性を緩和する費用支出を行い、労働者を呼び込みあう競争をする状況を考える分析を行った。 その結果、企業側が情報の非対称性を解消するための費用負担をし、実際に生産性が上昇したとしても、その上昇分は、労働者を他地域から呼び寄せるための賃金上昇に費やされることとなる。そのため、企業側にそういった費用負担を行うインセンティブがなく、社会全体としては、過少負担の状況となることを示した。 従前の移民の研究は、有名な研究の影響を受けて、労働者の能力が企業側によくわからない状況を主に分析してきた。それに対し本研究では、企業の労働者の活用能力がよくわからないときの移住行動と人的資本の活用に関して分析するという点において学術的独自性がある。 また、従来の企業と労働者の間の情報の非対称性に関する分析は、労働者と企業の賃金水準の交渉が主な研究対象となっており、企業間・地域間の相互作用についてはあまり顧みられていなかった。それに対し本研究では、そういった面にも着目しているという点において学術的独自性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った研究については、研究報告を行い、そこで得られたコメントを受けて、導入部分に必要な文献を追加で読み込み、論文の再構成を行っている。現在はディスカッションペーパーとして公開する準備作業を行っている。 また以前の研究に関しては、リジェクトなどを踏まえ論文の改訂を行い、投稿作業を行っている。 最後に、新型コロナウイルス感染症の広まりもあり、研究報告の回数が想定していたよりも少なくなった。しかし、年度内に3度のワクチン接種を行っているので、そういった障害が次第に緩和されていくと予想され、来年度以降に報告回数を増やすことで対応が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った研究については、来年度中にディスカッションペーパーとして公開する。 以前の研究については、投稿作業を引き続き行い、論文の採択へ向けた作業を継続して行っていく。 また、今年度行った研究を進めていくうえで思いついた研究のアイデアについては、引き続き検討を進めていき、将来的に研究課題とすることを目指す。 今後は、研究計画にあるように、情報の非対称性と階層的人的資本形成について地域の観点からの分析を進めていくことを考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延の影響により、学会がオンライン開催などへ移行したため、旅費支出がなかったことが主な要因である。 次年度は、3回のワクチン接種も済んでいるので、国内外の学会で、研究報告などを行うことで使用することを予定している。
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