2021 Fiscal Year Research-status Report
動学的確率的一般均衡モデルによる長期停滞下における現金給付モデルの開発と政策分析
Project/Area Number |
21K13286
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
小松 悟朗 城西国際大学, 国際アドミニストレーション研究科, 准教授 (60878247)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DSGE / 長期停滞 / 現金給付 / 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究 、COVID-19ような長期停滞下における現金給付政策フレームワークを各国政府に提供することを目指している。近年、金融危機(08年)やCOVID-19など大ショックが発生し、その後に経済が停滞を続ける「長期停滞」からの回復を目指し、多くの先進国で大規模な現金給付政策が採られている。しかし、標準政策ツールである動学的確率的一般均衡 (Dynamic Stochastic General Equilibrium: DSGE)モデルでは、そのミクロ的基礎と定常性の仮定から、新しい非定常な下落を示す不況下で、現金給付がどのくらい・いつまで必要な か、その副作用も含めた同定が難しい。 この背景のもと、本研究は長期停滞現金給付政策モデルの開発を目指している。特に、現在の金融・財政政策の標準マクロモデルであるニュー・ケインジアンDSGEの枠組みを用いて、そこに長期停滞産出モデルであるKomatsu (2020)と、失業におけるヒステリシスを再現したGali (2021)モデルを参考に長期停滞モデルを開発した。基本DSGEモデルであるGali (2015)の価格最適化において、構造ショックにより下落した過去の産出水準を制約として加えることで、産出に過去のショックが残る単位根過程の再現を行った。その上で、財政ファイナンスを含む給付政策の包括的枠組みであるGali (2020)を構築し、長期停滞における現金給付政策モデルの開発を行った。さらに、失業率を内生変数として取り込むことでCOVID-19禍の自然失業率上昇を識別し、その変動に連動した現金給付政策の提案を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍におけるオンライン授業やハイブリッド授業などへの準備・対応負担が予想以上に多く、また研究施設へのアクセスも限定的であることから、継続的な研究活動が困難であった。2022年度は、2021年度に購入した物品費に加え、論文のブラッシュアップや校正に必要な費用(主に学術図書と論文校正費)を、当初の使用計画そのままに使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現金給付政策をDSGEに組み込む。家計が現金保有からも効用得るよう効用関数を修正し、家計の予算制約式に消費のために事前に貨幣を保有する条件を加える。さらに国債発行と増税さらに中央銀行による財政ファイナンスを政府予算制約式に導入し、政策仮想実験のための政策式とすることで種々のシミュレーションを行う予定である。 また、経済停滞からの回復を判断する尺度である厚生損失関数を作る。 家計の効用関数を定常値周りで2次のテイラー展開を行い2次形式 損失関数を導出する。この損失の回復を現金給付政策中止の判断基準として用いることで現実的な現金給付政策の示唆を提示する。導出がうまくいかない場合は既存文献に従いより簡易な損失関数で代替することも検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍におけるオンライン授業やハイブリッド授業などへの準備・対応負担が予想以上に多く断続的な研究をせざるを得なくなり、研究費の執行は備品の購入のみにとどまった。2022年度は、論文執筆・完成・査読のための、論文購入費、学術図書費と論文校正費に研究を当てる予定である。
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