2021 Fiscal Year Research-status Report
The Causal Effects of Export Promotion: Natural Experiment and Structural Estimation Using SARS
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21K13308
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
牧岡 亮 北海道大学, 経済学研究院, 講師 (10836323)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 輸出支援 / SARS / 広州交易会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、中国広東省で2003年春に集団発生した重症急性呼吸症候群(SARS)と、同感染症が中国広州交易会への海外バイヤーの参加に与えた影響を自然実験として用い、輸出支援の効果を求めることを目的としている。2021年度は、同課題に対して、広州交易会に参加する企業のリストと中国税関統計を接合したデータを作成し、回帰分析を行った。その結果第一に、展示会参加企業の輸出国数に対して、SARSの負の影響を観察した一方、輸出製品数、輸出額に対する影響については、有意な結果が得られなかった。これは、SARSにより広州交易会に参加する海外バイヤーの数が激減することで、SARSが起こっていない通常期の展示会参加と比較して、SARS期に参加した中国企業が海外バイヤーとマッチし難かったことによると解釈できる。 また第二に、輸出国数に対する負の影響は、海外の買い手との情報の障壁が大きいと考えられる、非貿易企業や小規模企業で特に大きいことがわかった。これは、上記の海外バイヤーが展示会に参加しないことの負の影響が、情報障壁やマッチすることの費用を高めることを通じたものであることを示唆している。さらに第三に、これらの負の影響は、SARS期の展示会から三か月後から観察されたものの、一年後には観測されなくなっていることがわかった。この効果の短期性は、輸出支援の効果分析に関する先行研究である、Cadot et al. (2015)の発見と整合的である。 これらの結果は論文としてまとめられ、すでにいくつかの大学のセミナーで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、「研究実績の概要」で説明した通り基礎的な分析を行い、その結果をThe Values of Export Promotion: A Case of Canton Fair during the SARS Epidemicと題した論文にまとめた。またその分析を大学のセミナーなどで発表し、分析に対してコメントをもらった。今後はこれらのコメントをもとに論文を修正するとともに、引き続き学会やセミナーなどで発表を行い、分析の精度を高める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、昨年度に引き続き論文を学会や大学のセミナーで発表し、コメントをもらうことで研究の精度を高める予定である。そして年度の終わり頃に、学術雑誌に投稿することを目指している。また、同様の推定を企業の輸出価格や企業の輸出頻度などへと拡張することで、輸出支援の効果のメカニズムの特定を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、海外への研究発表や研究相談などに行くことができなかったため、次年度使用額が生じた。これらの資金を次年度以降に、物品(書籍・ソフトウェアなど)、論文出版にかかる費用(英文校正・投稿費用など)、海外・国内学会参加費用、などに使用することを検討している。
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Research Products
(5 results)