2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13309
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
小野塚 祐紀 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20875067)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大学入試制度 / 入試方法 / 教育経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
入試制度は、学生の選抜(誰が学校に行くのか)と配置(誰がどこの学校に行くのか)を決定しており、人材育成の観点から重要な役割を果たしている。本研究では、入試方法が人材輩出に与える影響について、日本の大学入試方法の分析をすることで実証的な知見を提供することを目的としている。特に筆記試験入試と推薦・AO入試に注目をする。 本年度は大きく分けて三つのことを行った。まず、出身高校ランクに着目して筆記試験入試入学者、推薦・AO入試入学者の基本的な事象をまとめた準備的な研究を洗練させ、査読付き学術雑誌に投稿した。これについては年度末に採択通知を得た。次に、観察された事象を基にして、進学及び入試方法の選択に焦点を当てた簡単な理論的枠組みの構築及びデータ分析に取り掛かった。上記の過程の中で、学会・ワークショップで計2回の研究発表を行った。 加えて、大学が保有している業務データを用いて分析をする準備を行った。これは当初は計画していなかったが、ワークショップで研究発表を行った際、研究代表者が所属する大学の業務データを研究に利用できるかも知れないとの指摘を受け、急遽計画を変更し行うこととした。業務データ利用のための準備及び大学側との交渉を行い、データ利用の許可を得た。また、業務データに含まれない変数を得て分析をより充実させるため、2022年4月入学者を対象に業務データとの結合が可能な形でのパネル調査を行うことを計画し、その準備をした。このアンケート調査については所属大学の研究倫理審査会の承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、1年目には1:基本的な事象をまとめた準備的な研究を洗練させ、査読付き学術雑誌へ投稿する、2:上記の研究で観察された特徴を基として、実証分析の際に指針となる理論的枠組みを構築する、3:大学入試方法が大学進学行動に与える影響の基本的な実証分析を行う、の三つを計画していた。 1については、当該論文を査読付き学術雑誌に投稿、改訂要求に応えた後に年度末に無事に採択通知を受け、計画以上の結果となった。国内の学会での発表も行った。 2、3に関しては、二次元のスキル(学力、まじめさ)と評価軸の異なる入試方法(学力のみ評価、両方評価)という最低限の特徴を持った簡単な理論的枠組みを考え、この枠組みと整合的な事象が観察されるかを念頭にデータ分析を始めた。データ分析にあたっては、東京大学大学経営・政策研究センター「高校生の進路についての調査」の個票データを借り受けた。 2、3の途中経過を1の成果と共に大学でのワークショップにて発表をした際、研究代表者が所属する大学で保有している業務データを研究目的で利用できる可能性を知った。業務データを利用した分析は当初の計画に入っておらず、また2、3についても途中であったが、業務データでしか知り得ない有用な変数(入試成績)があることや業務データを利用した研究は日本ではまだ少ないことから行う価値が高いと判断し、業務データの利用に向けて準備を行うことにした。また、業務データを補完するため、2022年4月入学者を対象に業務データと結合できる形でのパネル調査を行う計画を立て準備を行った。 当初の計画からは変更も生じたが、当初に計画していたものよりも質の高いデータへのアクセスが可能となり、また調査は所属大学での倫理審査会で承認が得られ、次年度以降これらを用いた分析への準備が順調なことから、研究全体としておおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、2022年4月に研究代表者が所属する大学へ入学する者を対象とした、全3回のパネル調査の実施を計画している。この調査で収集したデータと対応する業務データを結合して分析を進めていく。これと同時に、それ以前の年度の業務データのみを用いての分析も進めていく。データの特性上、大学の立場から、異なる入試方法により因果の意味でどのような学生を獲得できている・できていないのか、ということに焦点を当てて分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のために学会参加等ができなくなった影響で、国内旅費が不要になった。また、同様の理由から他の研究予算にも余裕が生まれ、一部のソフトウェアや図書の購入などをそちらから支出したために次年度使用額が生じた。次年度に、当初は計画をしていなかったパネル調査を行うことにしたため、その調査協力者への協力費の支払いに使用する計画である。
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