2022 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の保守的負債政策と財務的柔軟性についての研究
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21K13323
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
崔 ワイカン 京都産業大学, 経済学部, 助教 (30882295)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 財務的柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本企業が保守的負債政策をとる原因と財務的柔軟性の有用性について究明することを目的とする。2022年度は企業の財務的柔軟性(レバレッジを指標とする)と従業員待遇(所得)との関係性について分析を行った。既存文献では、両者の間に正または負、異なる関係性が存在すると提唱する論文がそれぞれ存在するが、本研究では日本企業において、従業員待遇(所得)と財務的柔軟性との間に正の関係性が存在するという結果をえている。つまり、従業員待遇の高い企業は潤沢な財務的柔軟性(低いレバレッジ)を持つ、ということである。さらに、因果関係に関する分析では、従業員待遇が原因で、財務的柔軟性が結果であることが示唆されている。 また、実証分析では財務的柔軟性の変動は主に時系列上の影響を受けた結果であるということが示唆されていることから、引き続き異なる期間においての企業の財務的柔軟性の有用性について分析を行う。以前の分析では、日本企業は2008年の世界金融危機の際に、既存文献が提唱した不況に備えて財務的柔軟性を蓄えるというような傾向を微かではあるが確認できた。今回は固定効果モデルで分析期間をバブル崩壊期までに拡張し、バブル崩壊期において既存文献が提唱したような傾向についてより顕著な結果をえることができた。 今後の計画として、ロバスト分析によって既にえている結果の信憑性を高めつつ、データセットの更新を行う。特に新型コロナウイルスによる影響を著しく受けた2020年度から2022年度のデータを分析に加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務校におけるデータベースの新規契約によってデータセットのアップデートが可能となり、新しいデータセットで今までの分析結果をもう一度確認するため、進捗状況はやや遅れていると判断した。また、新型コロナウイルスの感染状況により各地への渡航制限が課されていたため、(特に海外)学会への出席が影響を受け、情報共有や論文修正に関する意見の入手が難しいということが一つの要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
データセットをアップデートし、これまでの実証分析の結果を確認する必要がある。さらに、企業が持つ財務的柔軟性の変動分を回帰分析の主要説明変数とし、企業の株式超過収益率を被説明変数とし、財務的柔軟性が企業価値に与える分析に移ると考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染状況により海外渡航が難しく、国際学会へ出席できなかったため、旅費未使用額が生じた。これらを国際学会への参加並びに論文執筆に関係する経費に充てる予定です。
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