2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13330
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
岩永 安浩 広島修道大学, 経済科学部, 准教授 (50876141)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流動性ショック / 過小反応 / 日本株式市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 日本の株式市場を対象として, 米国の株式市場を対象とした先行研究に倣い, 流動性ショックと株式リターンの関係を調査した。その結果, 日本の株式市場でも米国の株式市場と同様に, ポジティブな流動性ショックが生じた銘柄は, ネガティブな流動性ショックが生じた銘柄よりも将来リターンが高いという合理的ではない現象が観測されることを確認した。この現象は, 流動性ショックに対する投資家の過小反応が原因で生じると考えられる。過小反応が生じる原因について, 投資家の注目度による過小反応仮説と低流動性による過小反応仮説という二つの仮説を検証した結果, 日本の株式市場においては, 米国の株式市場と異なり, 低流動性による過小反応仮説が強く支持されることが示唆された。また, 先行研究とは異なる視点から追加分析を行い, 次のような二つの新しい知見を得た。(1)流動性ショックの織り込みは, リターンが低かった(悪いニュースで流動性ショックが生じた)銘柄群の方が早く, リターンが高かった(良いニュースで流動性ショックが生じた)銘柄群の方が遅い。(2)マーケット流動性ショックが, 個別銘柄の流動性ショックの価格反映に影響を与えており, マーケット流動性ショックによって, 流動性ショックに基づくロングショート・ポートフォリオのリターンをある程度予測することが可能である。これらの研究成果について, 日本ファイナンス学会, JFA-PBFJ Special Issue Conferenceおよびワークショップ「証券市場の諸問題」で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第一段階が完了し, 2つの学会と1つのワークショップで研究成果を発表した。また, 論文を国際ジャーナルに投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
流動性ショックを「マーケット全体の流動性ショックに起因する成分」と「個別銘柄に限定された要因に起因する成分」に分解したときに, 現実の株式市場では, 両者がどのようにプライシングされているのか, どちらのプライシングが流動性ショックと将来リターンの間に正の関係を生み出しているのかを明らかにするための研究を行う。
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Causes of Carryover |
本年度に購入するはずであった株価データおよび財務データを共同研究者から入手することができたため, 購入しなかった。当該資金は, 次年度に行う研究で用いるデータ購入のために使用する。
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