2023 Fiscal Year Annual Research Report
地域基金によって地域公共財をファイナンスする仕組みが形成される背景と経済史的意義
Project/Area Number |
21K13334
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
酒井 一輔 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (30823794)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域基金 / 地域公共財 / 石高制 / 褒賞 / 小学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域基金を通じて地域公共財をファイナンスする仕組みがなぜ生み出されたのか、それは当該期の日本経済の発展や地域経済の近代化にいかなる意義を有していたのか、を明らかにしようとするものである。 2023年度は、昨年度に引き続き史料の探索・収集・調査を積極的に進めるとともに、昨年度に収集・調査した史料の分析を進めた。とくに近世期について、分析結果を総合するなかで、以下のような点が明らかとなりつつある。①近世社会の基幹的な制度である石高制の下で拡大した非農業生産と民費を幕藩領主が十全に捕捉できないという問題が生じていた。②これに対して、村役人などを中心に地域(民間)社会の内部で適正な「課税」(公租公課の負担配分)を模索する動向も見られた。③しかし、こうした動向はあくまで非公式的に展開したもので、公的な制度化がなされるには至らなかった。④これは、石高制下の課税体系下での「増税」が事実上、困難であったことを意味する。⑤そこで「増税」に代わる方法として、公的基金を造成し、その運用益を財源として用いる仕組みが、拡大する民富を吸収して地域公共財をファイナンスする持続可能な手段として、幕藩領主・地域(民間)社会の双方で積極的に展開されていった。⑥また、幕藩領主は褒賞制度を整備・運用することで上記を政策的に推進していった。また、以上のような仮説的見通しを裏付ける史料をいくつか新たに発見・収集することができた。これらの収集史料は現在も解読・分析作業を進めており、その成果を含めて今後、発表していく予定である。 また、明治期のものについては、小学校建設をめぐる史料について、昨年度に引き続き公文書類を幅広く探索した。今後は、これら収集史料の解読・分析作業を鋭意進めて、近世・近代を一貫した進めた仮説的見通しを取りまとめていく。
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