2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦時・戦後復興期日本の鋳物工業―技術格差の生成と定着―
Project/Area Number |
21K13336
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永島 昂 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10733321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鋳物工業 / アジア・太平洋戦争期 / 工業整備 / 科学技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、前年度に引き続き戦時期の鋳物工業の研究を進展させ、管理論研究会(2022年10月22日)にてその成果報告を実施した。 研究期間全体を通じて得られた研究成果を要約すると、次のとおりである。①戦後の高度成長期に鋳物工業の技術格差問題は解消するが、この技術格差問題が発生した時期は重工業化と都市化が進展する1920-30年代と考えられる。アジア太平洋戦争期には鋳物工業の技術格差問題が機械の増産にとって隘路となり、解決すべき問題として表面化した。②重工業化だけでなく都市需要に牽引されて発展した鋳物業者は、日中戦争が本格化するのに伴い、転業を迫られ機械用鋳物に移行していく。こうして鋳物工業は機械工業を支える基盤的技術としての性格を強めることになる。そして政府は銑鉄の配給統制を始めるが、すぐさま機械業者等向けの外注鋳物の入手困難が生じ、二次鉄鋼製品である鋳物も配給統制の対象となる。③1940年ころに戦時経済運営の行き詰まりが明るみになり、経済新体制論に基づく「機械鉄鋼製品工業整備要綱」が出され、その下で、鋳物工業を対象とした工業整備が展開した。鋳物工業整備の特徴は指定工場制度による「製品の専門化」「企業の組織化、合理化」であった。しかし、実態としては指定外工場が生産に参加するなど、当初の計画通りには進まない面があった。④また「科学技術新体制確立要綱」においても鋳物技術の問題は繰り返し指摘された。1942年には「高度の技術を要する高級鋳物」が「重要機械製造事業法」の対象とされ、技術指導と金属材料検定設備の設置が進められた。 以上のように鋳物工業における技術格差問題は戦時期に表面化し解消に向けた動きが見られたが、解消することなく敗戦を迎えることになった。
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