2023 Fiscal Year Research-status Report
個人の主体的なワーク・ライフ・バランスの実現に必要な資源に関する研究
Project/Area Number |
21K13371
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
高村 静 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (10808736)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ワーク・ライフ・バランス / 自律性 / 資源保存論 / ジョブ・クラフティング / 分散型ワーク / 分散と統合 / マネジメント行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究のとりまとめと、それを踏まえた新たな研究として、主に以下の3点を実施した。 第1に、2022年度に実施した調査のデータを分析し、結果と考察を論文にまとめ学会誌に投稿し、採録された。主な内容は、コロナ禍の緊急事態宣言下で広く行われたテレワークを、個人(P)要因と職場(環境(E))要因の計6変数を組み合わせてクラスター分析したところ、環境要因に恵まれていたか否かで2つの類型に分かれ、さらに個人要因である仕事中心主義/二重中心主義(仕事と生活の両方に価値を置くグループ)の2つの類型が組合わさることで、合計4つの分類に分けられた。コロナ禍のテレワークは二重中心主義者の資源を消耗させ、両立を難しくしWLCを生じさせていたが、組織からの資源提供(ictサポートや上司支援、自律性の付与)を受けた場合には、自ら資源獲得行動(クラフティング行動)を行い、WLCを克服していた可能性があることを、資源保存論を用いて説明した。 第2に、2022年度に実施したインタビュー調査を踏まえ同年学会報告した内容を論文としてとりまとめ、紀要に投稿した。ここではリモートワークを含む柔軟な働き方を導入したX社の3人のマネージャーが、それぞれのリーダーシップスタイルに応じたリーダーシップ行動をとること、またABW(Activity based Working)を取り入れたオフィスで異なる場の用い方(位置取り戦略)を行っていることを、オフィスで装着するウェアラブルセンサーのデータ分析の結果と聞き取り調査の内容から具体的に示した。 第3に、上記の紀要に投稿した論文の内容の一般化可能性を検討した。具体的には、大規模調査実施のための先行研究レビュー、仮説設定、調査設計を行った。大規模調査は、自らが経験した自律的な働き方と管理職のマネジメント行動を問うt1調査と、その成果を問うt2調査の2回に分けて実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①2022年度調査の結果データを用いて、すでに学会に掲載された論文以外の分析・とりまとめを行っている。数次の修正を加えており、論文としてのとりまとめを目指している。 ②昨年度実施した大規模調査の結果は学会報告に向け分析と取りまとめを行った。学会で報告し、そこで行われる議論を踏まえ、論文として取りまとめる予定で、概ね順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度の計画は次の2点である。 まず、昨年度実施した大規模調査に関しては、分析結果を6月の学会で発表する予定である。そこでの議論を踏まえ、年度の後半に向け論文として取りまとめる予定である。 さらに、本年度は資源保存論とジョブク・ラフティングの概念を踏まえた新たな調査を実施する予定である。2年目・3年目に実施した調査は、リモートワークなど柔軟で自律的な働き方を構成員に認めた職場のマネジメントに焦点を当ててきたが、それらの発見を踏まえて再び個人レベルのワーク・ライフ・バランスを実現する個人資源に焦点化したい。本研究のこれまでの取組で得られた知見の1つがジョブ・クラフティング(Jクラフティング)やワーク・ライフ・クラフティング(WLクラフティング)のうち、接近型のクラフティングは、個人が自律的に行う創造活動であり、主体的なWLB実現に大きな役割を果たすという点である。こうしたクラフティング行動の資源となりうる個人要因に着目した仮説設定、調査設計を行い、大規模調査を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
実施した調査にかかる費用が想定を下回ったこと、また本研究と重なりのあるテーマの他の研究に助成が受けられることとなり、そちらから調査に対する負担を受けられたことが主な理由となっている。本年度、これまでの成果を踏まえ、さらなる調査を実施する予定である。
|