2021 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるガバナンス改革がコーポレート・ガバナンスと企業価値に与えた影響
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21K13378
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
月岡 靖智 関西学院大学, 商学部, 准教授 (50736709)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / ガバナンス改革 / 社外取締役 / 会社法改正 / コーポレート・ガバナンスコード / スチュワードシップ・コード / 議決権行使 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は主に以下の研究結果を公表している。 【会社法改正による(半)強制的な社外取締役導入の効果】 研究結果は、「Does the mandatory adoption of outside directors improve firm performance and corporate governance in Japan?」という論文にまとめ、JFA-PBFJ Special Issue Conference等で報告すると共に、PBFJのスペシャルイシューに投稿中である。分析の結果、2014年6月の会社法改正から2015年の会社法施行までの期間に初めて社外取締役を導入した強制導入企業をトリートメントサンプルとし、トリートメントサンプル以外の企業から選んだコントロールサンプルとの差の差の分析を行っている。検証結果は、日本における社外取締役導入促進が収益性の改善には貢献したが、ガバナンスと企業価値の向上をもたらさなかったことを示している。 【2014年の会社法改正に関連するイベント日における市場反応】 研究結果は、「社外取締役導入促進に関するガバナンス改革と市場反応」という論文にまとめ、経営研究第72巻第4号に掲載している。具体的には、2012年8月1日(「会社法制の見直しに関する要綱案」公表日)、2014年4月25日(「会社法の一部を改正する法律(会社法改正法)」衆議院可決通過日)、2014年6月20日(会社法改正法成立日)、2015年6月1日(コーポレート・ガバナンスコード公表日)をイベント日とし、イベント日の直前決算期にすでに社外取締役を導入している企業とそうでない企業のイベント日周辺の超過収益率を比較し検証を行っている。検証の結果、どのイベントに対しても、直前決算期にすでに社外取締役を導入している企業とそうでない企業の市場反応の間に有意な差を発見できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでにガバナンス改革の一つである2014年の会社法改正、2015年のコーポレート・ガバナンスコードによる社外取締役の導入が企業のガバナンスおよびパフォーマンスに与える影響を内生性の問題をできる限り考慮する形で検証している。また、イベントスタディーの方法を用いて市場反応による、社外取締役導入促進が企業価値に与える影響についても検証を行っている。 加えて、実績には示さなかったが、2014年の日本版スチュワードシップ・コード導入前後でのパッシブ型ファンドの持ち株比率と議決権行使結果の関係を検証し、スチュワードシップ・コード後にパッシブ型ファンドが業績の低い企業のCEO選任議案および買収防衛策導入議案により反対票を投じる傾向にあることを発見している。研究結果は、「パッシブ運用がコーポレート・ガバナンスに及ぼす影響」という論文にまとめ、現代ファイナンス第44巻に掲載している。 さらに、今後の研究のためのデータ整備として、2017年の日本版スチュワードシップ・コード改訂により、コードを受け入れている機関投資家の一部が公表している個別議決権行使結果の収集と分析に向けた整備を行っている。具体的には、計20社の資産運用会社、信託銀行、保険会社の公表している個別議決権行使結果についての整備を行っている。 以上の点から「おおむね順調に推移している」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、スチュワードシップ・コード改訂による個別議決権行使結果の公表データの整備が概ね終了しており、個別議決権行使結果を用いて、スチュワードシップ・コード改訂等のガバナンス改革が議決権行使行動に与えた影響を直接的に分析する予定である。 加えて、機関投資家の特徴が議決権行使行動に与える影響についての分析を進める予定であり、そうした議決権行使行動が企業のパフォーマンスおよびガバナンスに与える影響を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、予定していた国際学会への出張旅費の支出を行わなかった。加えて、予定していたPC関連の機器およびデータの購入費用に関して、別の予算に余剰が生じたためそちらを使用することとなった。 令和4年度は、国内・国際学会への参加にかかる諸費用、海外ジャーナル投稿に関する費用およびデータ整理のための人件費を繰越予算から支出予定である。
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Research Products
(3 results)