2021 Fiscal Year Research-status Report
An empirical analysis of the effect of fraudulent accounting on auditor judgment
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21K13396
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾関 規正 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (60846038)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 財務会計 / 監査 / 実証研究 / 虚偽表示 / 不正会計 / 不正リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、企業による不正会計の実行に対する監査人の判断に生じる変化を実証的に明らかにすることである。財務報告の信頼性を保つためには、財務報告において企業が意図的に虚偽表示を行うことを意味する不正会計は防止されなければならない。その早期発見や防止に対して監査人は監査を通じて重要な役割を持つ。本研究課題は、そのような不正会計の発覚前の段階において、監査人が不正リスクを識別して判断を変化させているのかどうかを実証的に分析し、不正リスクの兆候の有無やその監査人におよぼす影響の有無を通じて、不正会計と監査人の判断との関連を解明する。監査人に影響を及ぼす不正会計事例の特性や不正リスク要因となる兆候を調査し、それらに応じた監査人の行動の変化を通じて不正会計の予測可能性についても検証を行う。 本研究は、具体的には以下の三つの課題に取り組むことを計画している。まず、課題①「企業の不正会計に対する監査人の判断の実態」について分析する。次に、課題②「監査人の判断に影響する不正リスクの兆候」について調査する。そして、課題③「監査人の判断に生じる変化に含まれる不正会計のリスク情報」を検証する。いずれも2005年から2020年までの日本の上場企業の財務報告における虚偽表示事例を対象として実証的な分析を行う。 財務報告の制度上の取り扱いにおいて不正会計に対する監査人の役割は重視されるものの、重要な虚偽表示の原因となる不正会計を監査人がそのリスクを認識していたかどうかといった不正リスク評価の適切性は不明瞭となっている。本研究はその実態を示す証拠を提供することで学術的に貢献するとともに、実務における不正リスク評価の理解や不正会計の発見や防止に対する理解を追加する意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画では、2021年度には研究対象となる日本の不正会計事例を2020年の事例まで収集し、課題①について文献調査、分析、論文執筆を行う計画であった。 しかしながら、本研究で重要な研究材料となる日本の不正会計事例の収集について、不正会計(財務報告における意図的な虚偽表示)だけでなく、誤謬(意図的でない虚偽表示)事例についても範囲を拡大して収集を行った。その理由は以下のとおりである。日本企業の虚偽表示の公表実態として、不正会計事例だけが顕著に生じるだけではなく、意図の有無が特定されない誤謬事例も影響の大きい事例も含めて一定数生じている。そのような現状の開示実務も考慮すると、財務報告上の問題となるのは、意図の有無にかかわらず虚偽表示全般であるため、本研究の対象事例の範囲を拡大することで、日本の虚偽表示の公表実態に沿った研究成果を得ることを可能にする。また、虚偽表示における意図の特定の有無による違いがあるかどうかをたしかめるためにも誤謬事例との比較が必要となる。 2021年度の進捗は、2020年までの虚偽表示事例全般を収集することまでを完了し、収集した事例全般の開示実態に関して、予備的な分析を行った結果を論文にまとめている。2021年度における予備的な調査結果を前提として、2022年度以降では本研究課題の具体的なテーマ①および②に取り組む計画とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の期間のうち1年間が経過したが、研究進捗は当初の計画に対してやや遅れている。具体的な課題については、今後の期間で当初の計画に従って論文投稿や掲載の段階まで進める。これらの課題の今後の推進方策として、研究会または学会における報告や査読誌への投稿を具体的な目標として設定し、その目標に合わせて成果を出していくこと、および、それらの機会を通じて他の研究者からの意見を取り入れることに取り組む。 具体的には、2022年度において、課題①について、先行研究をレビューして分析デザインを検討したうえで分析および論文執筆を行う。そして、研究会または学会における報告を行ったうえで、査読付き学術誌への投稿を行うことを計画する。また、課題②についても課題①の進捗に応じて適宜着手する。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していた研究の進捗が上記の理由でやや遅れが見られること、および、別の研究課題を2021年度まで延長したことにより1年分のデータの更新費用をまかなうことができたことから、以下の次年度使用額が生じる。次年度では本研究課題の具体的な分析テーマについて、研究会または学会における報告や査読誌への投稿を行う。このための次年度使用額として、最新の文献や研究にアクセスするための費用、分析対象となる企業や監査人のデータを期間経過に応じて入手・更新する費用、研究会または学会への参加、投稿前の英文校正料金や査読誌への投稿料、投稿先となる学会への登録料(電子ジャーナル閲覧サービスも含む)が必要となる。その他、研究環境を維持するために必要な消耗品に係る使用額が生じる。
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