2021 Fiscal Year Research-status Report
An analysis of goal setting and non-linear incentive schemes
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21K13406
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 太一 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 講師 (10779771)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非線形報酬契約 / 業績評価 / モラル・ハザード / 参照点依存効用関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
「目標達成を条件とした非線形な報酬契約の行動契約理論による分析」という研究課題について、本年度は主に先行研究の検討を行った。非線形な報酬契約は,マネジャーに機会主義的な行動を取らせてしまうことから,経済学的な観点からは非合理的であると考えられている。しかし,それにも関わらず,目標達成を条件とした非線形な報酬契約は実務で広く用いられている。これはなぜなのだろうか、というのが本研究で明らかにしたい根本的な問いであった。 この問いに取り組むために、本研究では参照点依存効用関数を応用した先行研究を検討した。参照点依存効用関数とは、何らかの目標値と実績値の差に対して効用を感じる性質を表現するものである。たとえば「目標を超える成果を得られたら嬉しい」とか「目標未達であると悔しい」といった感情である。目標達成を条件とした報酬契約は、人々のこうした性質を利用しているのではないだろうか。そこで、参照点依存効用関数を用いた代表的な研究である、Fehr and Schmidt(1999)、Corgnet et al. (2015)、Koszegi and Rabin (2006)などを中心に検討・整理を行った。その結果、一言に参照点依存効用関数と言っても、種々のバリエーションがあることがわかった。たとえば、参照点に他者が受け取る金銭的ペイオフを用いている場合(「他者が自分よりももらっていると悔しい」「自分が他者よりももらっていると嬉しい」)もあれば、業績目標を用いている場合もあった。さらに、参照点を外生変数としている場合もあれば、内生変数としている場合もあった。本研究では、特に参照点を外生的な業績目標としている場合が参考になると考えられる。 この先行研究のレビューを通じて、次年度では実際に数理モデルの構築、ならびに学会・研究会等での報告に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、本年度中にトイ・モデルの作成まで進める予定であったが、先行研究のレビューまでしか進められなかった。同時進行している他の研究課題にエフォートの割り振りが大きくなってしまったためであるため、本年度はエフォートの割り振りにも注意して研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究のレビューは十分実施することができたので、今後は数理モデルの構築を行い、適宜学会・研究会等での報告を行うことで、他の研究者からコメントをもらう機会を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた学会出張・研究会出張などが実施できなかったため、支出が当初の想定よりも少ない額になった。
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