2021 Fiscal Year Research-status Report
公共空間の再編をめぐるセクター間協働に関する社会学的研究
Project/Area Number |
21K13416
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
三浦 倫平 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (10756836)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 公共空間 / 協働 / プレイスメイキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人々の生活の質や、地域の「価値」自体も高めていくことを目的としたプレイスメイキングという実践に着目する。プレイスメイキングとは、「より良い公共空間を作り出す試み」として近年国内外に注目されている実践、考え方であるが、これまでの先行研究においては「様々なアクター間の協働」という空間の再編成にとって最も重要な局面が暗黙の前提に置かれてしまっている。 2021年度ではプレイスメイキング概念がアメリカでいかに発展してきたのか、また関連する概念や議論としてtactical urbanism論やgentrification論との関係性についても検討を行った。そして、「官セクターと民間営利セクターと市民セクターの協働」という側面が公共空間の再編成を検討する上で理論的、実証的な研究課題になるという事の確認を行った。 その上で、2021年度は行政・企業・市民が試行錯誤しつつも公共空間の再編成に向けて協働することを目指している東京都世田谷区下北沢地域の事例を主な研究対象として、調査・分析を行った。下北沢地域では小田急線が地下化したことを契機に、線路跡地をいかに有効活用するかということが重要な課題として検討されてきている。2021年度には小田急電鉄が線路跡地に完成させた商業エリア開発がいかに公共空間になり得るか、その可能性について分析すると共に、駅前広場や道路整備予定地などにおいて車交通以外の利用の可能性について検討する官民協働の試みについて分析を行った。 その結果、重要な研究課題として浮かび上がってきた点としては、市民セクターのアクター間の中でもいかに協働を進めていくことができるのかという課題が存在するということである。多様な利害が絡む都市部では市民セクターの統一それ自体も容易ではない。これが今後、どのような論理で可能となるのか(もしくは困難となるのか)にも着目する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍において、多くの人々が密集する公共空間はその存在自体が社会的に問題化される傾向があり、2021年度の前半は下北沢地域でもプレイスメイキングに向けた実践は十分には展開されなかったが、2021年度後半からはコロナ禍以前から「より良い公共空間」を形成しようと活動していた人々を中心に、改めて「街にとっての公共空間の意味」や「街に関わる人々の生活、娯楽、生きがい等にとって公共空間の意味」について議論が蓄積されてきており、参与観察やインタビューを実施することができた。その結果、2021年度においてはプレイスメイキングの現場において、いかなる論理で公共空間の再編が正当化されるのか、またどのような協働体制を作り上げていこうとしているのかという点について検討をすることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則って研究を推進し、2022年度においては2021年度と同様の方針で分析内容を一層深める。また、公共空間の形成(プレイスメイキング)という実践は、常に新たに浮上する様々な課題に対峙し続けなければならないものであるという事を意識して調査を進めていく。具体的には、研究者と実践者が共にその課題をめぐって相互に議論を交わすことで、実践者の主観的世界を深く描き出すというアクティブインタビューという調査方法で調査を進めていく。そうすることで、公共空間の形成という実践課題における様々な課題――特に協働の達成という課題――をめぐって、人々がどのように捉えているのかということがより詳細に理解できると考える。
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Research Products
(1 results)