2021 Fiscal Year Research-status Report
Foster Care and Medicalization
Project/Area Number |
21K13422
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Research Institution | Tohoku Bunkyo College |
Principal Investigator |
吉田 耕平 東北文教大学, 人間科学部, 講師 (80580836)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 医療社会学 / 医療化 / 精神医療 / 発達障害 / ADHD / 向精神薬 / 社会的養護 / 児童養護施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の2021年度は、子どもの問題行動の医療化(ADHDの拡大)に焦点をあて、先行研究および関連資料の収集をおこなった。並行して、医療化が進む日本の児童養護施設の実態把握を目的とした質問紙調査の検討を進めてきた。 資料研究では、主にADHDの診断を受ける子どもの増加が続くアメリカに焦点を当て、そのADHD拡大の要因を探った。結果、アメリカでは①不注意を理由にADHDの診断を受ける女児が増えていること、②2010年に成立したACA法により、低所得者層の人たちが医療を受けられるようになったこと(CHADD 2021; Xu et al. 2018)、③メディケイドの子ども(2-5歳)は、非加入の同年齢の子どもと比較してもADHDの治療を受ける可能性が2倍高く、約4人に3人がADHDの治療を受けていることが指摘されている(CDC 2021)。 特に③メディケイドには、フォスター・ケア(里親や児童養護施設)に措置された子どもが多く含まれており、一般家庭よりもフォスター・ケアの子どもがADHDの診断を受け向精神薬が投与されやすいことが報告されている(GAO 2011)。こうして、フォスター・ケアの子どもが、精神医療につながりやすい点については、医療関係者の間でも議論が開始され、子どもが里親から里親へと措置変更が繰り返され、養育者に対して不信感を抱いていた。そして、子どもとの関係を築くことが困難になった里親たちが、子どもの問題行動を医療の問題として解釈し、子どもを連れて精神科を受診しているという(Barnett et al. 2018)。 以上、アメリカにおけるADHDの拡大や、2000年代以降日本でもADHDの診断を受ける子どもの数が増加傾向にあることや、児童養護施設の医療化が進行していることは、本研究に関連する研究会で報告し、研究会のメンバーから、全国調査に向けて情報提供を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の研究計画では、2021年度は児童養護施設の医療化の進行を調査するため、全国の児童養護施設に質問紙を配布し、回収したデータの分析をおこなうことが予定されていた。これに対して、2021年度は上記の「研究実績の概要」に記したように、先行研究および資料収集をおこない、質問項目の選定と検討に時間を割いてきた。こうして予定していた計画が変更に至った背景には、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の蔓延によるところが大きいが、調査開始に向け資料分析や質問項目の選定に時間を取れることができた。とはいえ、当初の計画から、調査開始の時期を2022年度に変更したため、本研究の申請段階において予定されていた研究内容からは「やや遅れている」ものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に計画していた質問紙調査をおこない、得られたデータを分析し、進行する児童養護施設の医療化に関する新たな知見を得る。なお、質問紙の回収後は、回答結果に基づくインタビュー調査も予定しており、具体的には、ADHDの診断を受け薬物療法が開始されて以降、施設の養育がどのように変わったのか。また当事者である子どもたちの思いをどのように汲み取り支援にあたっているのか調査を進めていきたいと考えている。ただし、新型コロナウィルス感染症の蔓延状況をみながら、対面での調査が困難になった場合、実施方法の変更を含め再検討に入ることにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大等により、2021年度に予定していた全国調査は延期となった。その質問紙を用いた全国調査は、2022年度に実施する計画で進めており、2021年度未使用分に関しては2022年に引き継ぐことになった。またこの質問紙調査を終えた後、インタビュー調査を計画しており、2022年度の予算は、こうした調査旅費として使用する計画を予定している。
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