2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K13423
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
鳥越 信吾 十文字学園女子大学, 社会情報デザイン学部, 講師 (00839110)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 待機 / 行為 / シュッツ / ゴフマン / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までは、待機を主題化した研究の収集および読解を行ってきた。これを受け、今年度は既存の社会学的行為論との関連のなかで待機の研究を行ってきた。今年度にとりわけ注力したのは、シュッツの行為論とゴフマンの相互行為論における待機の位置づけである。本研究では、主にシュッツ行為論とゴフマン相互行為論に関連する一次文献および二次文献の読解・検討によって、下記の知見を得た。 待機は、シュッツの行為論においては「負の行為」( Schutz, A. [1954] 1962, “Concept and Theory Formation in the Social Sciences,” Collected Papers I: The Problem of Social Reality, (ed.) M. Natanson, Nijhof. =1983, 渡部光・那須壽・西原和久訳「社会科学における概念構成と理論構成」『アルフレッド・シュッツ著作集第1巻:社会的現実の問題Ⅰ』マルジュ社. )として位置づけられる。そうであるがゆえに、待機とは、必ずしも身体的行為を伴わないものであることになる。しかしながら、身体的行為を行っていないこと=何もしていないことは、当該行為者が置かれている社会状況によっては不適切だとみなされる場合がある。したがって行為者は、そうした場合には、自分が待っているということを呈示する必要がある。この点で、待機は「演技」という問題系につながっていく(Goffman, E. 1959, The Presentation of Self in Everyday Life, Doubleday and Company Inc.=1981, 石黒毅訳『行為と演技』誠信書房)。この脈絡について明らかにできたことが、今年度の研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は研究成果の公表にまでは至らなかった。それゆえ、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
元来の研究計画には、介護施設でのインタビュー調査予定を組み入れていた。しかし、待機について行為論の観点から研究してきたこれまでの研究成果は、「日常的な相互行為場面での待機の呈示のあり方」について研究するのにもっとも適したものとなった。 それゆえ、今年度の研究計画を変更し、施設でのインタビュー調査ではなく、日常的な相互行為の中の待機について調査していくことを目指す。具体的には、駅などの待ち合わせ場所で、人々がどのように「自分は待機しているのだ」ということを演技をとおして示し合っているかということを、主に観察調査およびエスノメソドロジーの手法を通じて解明していく。
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Causes of Carryover |
今年度は未使用額が生じることになった。その原因は、文献を予想より購入することがなかったことにある。より具体的には、今年度はもともとはさまざまな行為論の文献を広く収集しながら研究を進める予定だったが、今年度の実際の研究は、シュッツ行為論とゴフマン相互行為論を集中的に検討することになった。このシュッツとゴフマンの関連文献については、研究代表者はすでに一定程度所持している。それゆえ、予想より文献購入費がかからず、未使用額が生じた。 翌年度は、主に相互行為論およびエスノメソドロジー関連で購入予定の文献が多数あるため、これらの購入のために助成金を使用していくつもりである。
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