2021 Fiscal Year Research-status Report
国民による移民の受け入れ社会に対する帰属意識の認識:実験による解明
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21K13427
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
五十嵐 彰 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (90844762)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民 / 帰属意識 / 質問紙実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移民がもつホスト社会への帰属意識を、国民がどのように認識するかを検討することを目的としている。国民がもつ、移民の帰属意識の認識は今までほぼ研究されてこなかった。しかしながら、国民の移民の帰属意識に関する認識は、国民と移民の良好な集団間関係を考える上で学術的に重要である。国民は多くの場合移民が受け入れ社会に対して強い帰属意識をもっていることを望んでおり(e.g., Verkuyten, et al., 2014)、この希望に反している場合、すなわち移民の帰属意識が低いとみなされる場合、国民は移民に対する排外意識を強くもつことがわかっている(e.g., Zagefka, et al., 2014)。 研究対象の国として日本とイギリスを選択する。日本とイギリスは移民の受け入れ状況や移民に関する政策(多文化主義政策、同化主義政策)の点から異なっており、こうした社会環境に応じて人々の認識が変わるのかというマクロ要因について検討する。 方法として、移民のプロファイルをランダムに生成して提示する実験手法(e.g., 年収800万円のイラン出身の移民男性)を用いることにより、国民が、どのような移民に対して帰属意識が強いと認識するのかを検討し、移民の帰属意識認識に関するミクロ要因を明らかにする。プロファイルの中身として、先行研究において移民のホスト社会に対する帰属意識を決める要素として明らかにされてきた要素(De Vroome, Verkuyten, & Martinovic, 2014; Verkuyten & Martinovic, 2012)、すなわち「国籍」「英語能力」「職業」「学歴」「イギリス人の友人数」「自集団の友人数」「被差別経験」をもとに形成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WEB調査会社のYouGovに依頼し、3月にイギリスで実験調査を実施した。得られたデータを分析し、論文化可能な結果であることが判明したため、それをもとに論文を現在執筆中である。しかしながら、ここで得られた結果は多文化主義を反映したものとは言い難く、日本との比較に十分な意味付けをすることが困難になる可能性が出てきた。そのためまずはイギリスのみを対象にした実験で論文を執筆している。日本での実験は帰属意識に基づく、他の関連したトピックに軌道修正して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリスでの実験はすでに終了し、論文を執筆している。日本での実験は形を変え、帰属意識の認識がどのように差別に影響を与えるかを検討する予定である。実験は日本のWEB調査会社に依頼し、今年度の8,9月頃行う予定である。
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Causes of Carryover |
イギリスでの実験のめどが早い段階で立ったため、また実験にかかる費用が想定以上に高かったため、次年度使用額が生じた。計画全体で必要なデータは取れているため、翌年度は計画を前倒しし、必要なデータや資料を集めていく予定である。
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