2021 Fiscal Year Research-status Report
医療・保健・福祉分野に従事する対人援助職の人材確保に関する研究
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21K13430
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中井 良育 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (20836077)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対人援助職 / 人材確保 / 職務特性 / コミュニケーションスキル / 職場ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、離職率が高く人材確保が難しい介護職員といった医療・保健・福祉分野に従事する対人援助職の適正な処遇のあり方や、どのように定着させていくのかを検討し、組織を支える人事や人材育成の諸施策の在り方について考察し、方向性を提言していくことを目的としている。まず、医療・保健・福祉分野に従事する対人援助職のコミュニケーションスキルの諸要素が職場ストレスに与える影響を明らかにするため、新潟県内の老人福祉施設(106件)、老人保健施設(54件)、障害者支援施設(30件)の計190件に勤務する生活(支援)相談員、介護支援専門員、生活支援員、介護職員、看護職員(各施設から10名抽出した計1,900名)を対象に郵送法による質問紙調査を実施した。 研究の結果、次の3つが示唆された。第1に、コミュニケーションにかかる教育・訓練の機会を得ることは、社会的状況判断の対応力を高めるとともに業務遂行に伴う重責や不安や将来を悲観する利用者への介護や支援に伴うストレスにポジティブな影響を与えることである。第2に、社会的状況判断は、利用者が抱える不安や悩みを捉え、利用者の課題解決につながる重要な能力である。第3に、社会的状況判断の理解力は、職場内の人間関係だけでなく、業務遂行に伴う不安を低減させることであることが明らかになった。 また、これらの結果から、次の3つを提言した。第1に、仕事を通じて受ける指導やアドバイスを受ける機会が就業形態の違いや、特定の職種に偏らないような人材育成策が必要である。第2に、対人援助職の職場定着を促すためには、コミュニケーションに関する知識や技能を高めるために受ける研修や講習に積極的な参加を促す取り組みが必要である。第3に、指導やアドバイスを受ける側が上司や指導者の考え方や方針を受容できる指導方法を検討することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、初年度(令和3年度)に予定していた対人援助職を対象とした量的調査を実施し、医療・保健・福祉分野に従事する対人援助職のコミュニケーションスキルの諸要素である社会的状況判断能力が職場ストレスに与える影響を明らかにする目的はできた。また、職種や就業形態の違いによって職場ストレスに与える影響度が異なることも明らかになりつつある。これらの研究結果は、令和4年4月に新潟医療福祉学会の学会誌に投稿申請をしており、現在査読中である。 一方で、職種ごとの中核的職務特性を明らかにしようと先行研究で示された測定尺度を用いたが、信頼性が低いことで、測定尺度として使用できないことが明らかになった。この結果から、職務特性測定尺度を新たに開発する必要性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進する方策は次の3つである。第1に、中核的職務特性及び重要な心理状態を測定する尺度について検討し、職務特性を測定する尺度の開発を行う。第2に、その尺度を用いて、中核的職務特性の促進要因と重要な心理状態を得られる成果の阻害要因を明らかにする。第3に、コミュニケーションスキルと職場ストレスの関係に着目し、それらの要因が内発的モチベーションや職務満足、離転職意向に与える影響の違いを明らかにすることである。 これらの方策を推進するにあたり、対人援助職を対象としたインタビュー調査及び質問紙による質的・量的調査を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、学会へ出席をしたが、コロナ禍によりオンラインに変更され、旅費が発生しなかった。当該年度予定していた学会報告を次年度に実施する予定であり、対面での学会が開催される予定であることから、次年度は旅費が生じる予定である。また、職務特性の測定尺度を見直す必要が生じたことから、ヒアリング調査及び質問紙調査を新たに実施する。そのため、次年度使用額が生じた。
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