2021 Fiscal Year Research-status Report
多様化する農業および農業労働の現代的な意義の解明とジェンダー間比較
Project/Area Number |
21K13431
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
谷川 彩月 人間環境大学, 人間環境学部, 助教 (60895811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 農業従事者 / ジェンダー / 有機農業 / 農村社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様化しつつある農業労働・農業従事の意味性を類型化し、農業労働の現代的な意義を解明すること、およびこうした知見をもって農村社会学・労働社会学・家族社会学にて議論されてきたジェンダー役割・規範論の精緻化を図ることを目的としている。この目的を遂行するために、本研究では農業従事者の質的多様化と付加価値型農業の普及による農業そのものの多様化といった現代農業にかかわる2つの多様化に着目し、ライフコースあるいはキャリアパスとしての多様な就農状況と、就農に対する多様な労働観について明らかにしたうえで、ジェンダー間比較を通して、2つの多様化がジェンダー間でどのように異なるのかを検証しようとしている。従来の研究より、農業従事者のライフコースやキャリアパスが多様化しつつある現在においても、土地所有上の問題から家長男性による農業従事が女性より優位であることが指摘されてきた。一方で、土地所有上の問題を回避できる雇用労働としての農業従事が近年増加しており、こうした潮流が農業従事におけるジェンダー格差にどのような影響を与えうるのかもまた、現代農業における重要な観点であると考えられる。こうした観点から、本年度は農業従事者へのインタビュー調査を実施した。調査結果として、回答者は有機農業に特化した農場経営を行っており、従来的な慣行農業とは一線を画す経営方針を有していた。しかし、家長男性として相続した農地を経営しており、当該の者については経営上もライフコースとしてもジェンダー上のハンディキャップはみられなかった。なお、本年度は新型コロナウイルスの影響があり、十分な聞き取り調査が実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスをめぐる状況が好転せず、当初予定していたスケジュールでインタビュー調査を進めることができなかった。夏頃まではデルタ株による緊急事態宣言等により、移動や不特定多数との面会が状況的に難しくなった。秋以降は少し状況が改善された頃に新型のオミクロン株が流行し始めた。本年度は研究の初年度であったため、まだ直接的なやり取りが始まっていないインフォーマントが多く、そうした人びとに対してコロナ禍という社会的状況下でインタビュー調査をお願いすることは心理的に障壁が高く、結果的に調査対象が県内で接点を持てたインフォーマントに限られた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスをめぐる感染対策は目下進行中であるため、こうした社会的状況を鑑みながら調査を進めていく所存である。幸い、新型コロナウイルスの感染経路等が科学的に解明されつつあり、緊急事態宣言等のコロナ禍における社会的活動の規制状況も以前よりはいくぶん緩やかになりつつある。そのため、次年度以降は本年度と比較すると新たなインフォーマントへも調査依頼が心理的にしやすくなると予想される。なお、本年度分の遅延については、本年度分の研究計画を次年度に引き継ぐことで対応する。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスをめぐる社会的状況により県境をまたいだ調査が困難である時期が続いたため、調査費用として計上していた旅費の予算額を消化できなかった。次年度は社会的状況を鑑みつつ、本研究の主な調査方法であるインタビュー調査やフィールドワークを実施していきたい。
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