2021 Fiscal Year Research-status Report
南・東南アジア人留学生の日本における就職者の増加要因の研究
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21K13441
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
眞住 優助 金沢大学, GS教育系, 講師 (50747582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 外国人留学生 / 移民の労働市場への参入 / 国際教育 / 国際社会学 / 留学生のキャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクト初年度である本年度はおもに3領域を中心に研究調査を進めた。第1に、日本における留学生受け入れ政策の史的変遷と近年の動向に関する調査である。近年の留学生の日本での就職者数の増加を理解するには、留学生の数的増加だけではなく、留学生の日本での就職者の割合の増加要因を理解する必要がある。同割合の上昇の原因の1つに、近年の政府による積極的な就職促進政策があるとの考えにもとづいて、政府資料等の調査を行うと同時に、留学生の受入れや就職に関係する政府の関連省庁の関係者らによる報告会などに参加した。調査を通じて、就職を促す方策の策定だけでなく、就労のための在留資格の発給に対する態度においても重要な変化があることを示す手がかりを得た。第2が、留学生の就職や就労に関する関連先行研究の整理である。近年の世界大での留学生数の増加に伴って、日本のみならず、主要な留学生の受入れ国を中心に、留学生のエンプロイアビリティに関係する調査研究の蓄積が進んでいる。留学生の就職に影響を及ぼす要因について、海外の研究潮流を整理するとともに、本研究の位置付けを図る作業を行った。第3に、留学生の就職割合に関するより最近の動向の把握である。この目的のため、日本学生支援機構より2019年度『外国人留学生進路状況調査結果』の国(地域)別データの提供を受けた。分析の結果、ベトナムやネパールを始めとする、南・東南アジア出身者の日本での就職者の割合が上昇傾向にあることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、首都圏等において緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に発令されたことの影響もあり、留学生等に対する対面インタビュー調査を実施することを控えた。ただし、その対案として、直接的な対面接触を伴わないかたちの調査を進めた。具体的には、上述の通り、日本における留学生の受入れと就職に関する関連文献や公的資料の整理と分析、各種の報告会等への参加である。日本における留学生の就職促進政策は、一方で国内の少子高齢化による労働力不足への懸念、他方でコロナ禍による留学生の入国制限と経済の減退等など、留学生の就職促進に対する相反する構造的影響力が交差するなかで、当初予期しなかったかたちで変更が行われる可能性がある。このため今後、留学生の就職に対して政府がどのように対応を変更するか、またはしないのかについて、継続的に注視をすることは必要であり、その意味において、今年度の調査でもって十分な知見やデータが得られたわけではない。ただし、今年度の研究調査は、とくにコロナ禍前の状況の理解にとって不可欠であり、今後、コロナ禍後の事態の推移を的確に理解する目的にとって、有益な作業であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
留学生の就職を促進させるメカニズムのさらなる解明を目指して、今後は、留学生自身、留学生が就労する企業、また留学生の就職を斡旋・支援する企業や組織等など、各種のステークホルダーに対して、インタビュー調査を行う予定である。留学生に対しては、日本における人的資本や社会関係資本の発展状況について、留学生の就労企業に対しては、留学生の企業内の役割や留学生雇用のメリットについて、また就職斡旋・支援企業や組織に対しては、その制度的な発展状況について聞き取り調査を行いたい。そして、これらの調査で得られた知見を、本年度実施した調査で得られた洞察を付して考察することで、留学生の近年の就職状況について、多角的かつ総合的な洞察を導出することを目指したい。いまだコロナ感染の懸念が十分に払しょくされないなか、対面インタビュー調査を計画することにはさまざまなリスクや困難が伴う可能性は否定できない。そのため対面調査の実施が困難なときには、調査対象者の同意が得られる限り、オンラインによる調査を行うなど、状況に即した対応を講じることにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響によって首都圏にて対面インタビュー調査を実施することが困難であり、旅費を支出する機会がなかったことから、次年度使用額が生じた。来年度は、インタビュー調査の本格的な開始を予定しており、おもにそのための経費として研究費を使用する。また、投稿論文のための英文校正費ならびに学会参加費にも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)