2023 Fiscal Year Research-status Report
生活保護厳格化を求める世論の原因としての不正受給認識の把握・是正に関する実証研究
Project/Area Number |
21K13452
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
伊藤 理史 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (70766914)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生活保護 / 生活保護バッシング / 構造トピックモデル / 計量テキスト分析 / ヴィネット調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生活保護厳格化を求める世論の主要な原因である不正受給認識に注目した上で、受給者評価の把握とそれを是正する新聞の生活保護報道の在り方を実証的に解明することである。第1に、不正受給認識の実態を把握するため、ヴィネット調査を用いてどのような属性の人が生活保護制度の「正当/不当」な受給者と評価されているか明らかにする(分析1)。第2に、不正受給認識を低下させる新聞の生活保護報道の内容を把握するため、構造トピックモデルを用いて記事内でどのように生活保護制度・受給者を表象しているのか時系列的に明らかにする(分析2)。第3に、サーベイ実験を用いて実際に不正受給認識を低下させる生活保護制度・受給者表象を特定する(分析3)。 2023年度は、3つの分析課題のうち、分析2については、昨年度に引き続き分析・論文執筆中である。また分析1についても、昨年度に引き続きヴィネット調査を企画・設計するための情報収集を継続中である。さらに生活保護厳格化を求める世論との関連が想定される政治意識として、ポピュリスト態度に注目し、無作為抽出・全国調査にもとづく規定要因分析を行った。その結果、(1)ポピュリスト態度の因子構造は、「人民主権」と「反エリート/多元主義」の 2 因子解となること、(2)ポピュリスト態度の規定要因は、社会経済的資源よりも経済/政治文化に関する心理変数の効果が大きいこと、(3)ポピュリスト態度は左派のラディカルな政治的アクターと関連しており、供給側でポピュリストとされる政治的アクターの成功を説明できないことが明らかとなった(数理社会学会が発行する『理論と方法』の特集論文として掲載)。得られた知見については、今後実施するヴィネット調査やサーベイ実験の企画・設計時に参考とする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析2の構造トピックモデルによる新聞記事分析では一定の進捗を得ているものの、いまだ論文投稿・掲載には至っていない。また分析1のヴィネット調査の企画・設計もスタートさせているものの、こちらもヴィネット調査の実施には至っておらず、やや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず分析2について、学会報告で得たコメントを踏まえた上で、可能な限り早期の論文投稿・掲載を目指す。また分析1のヴィネット調査と分析3のサーベイ実験についても、分析2の成果を反映させた上で設計・実施する。実施後にはデータの整形・クリーニングと分析を行い、研究成果を学会報告と論文の形式で発表していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主にヴィネット調査とサーベイ実験の実施を延期したためである。これは昨年度に引き続き行動規制が緩和される(5類化)等、社会生活におけるコロナの影響が次第に減少していく中で、コロナ禍よりもポスト・コロナの日本社会において調査を実施した方が良いという判断にもとづく。 使用計画としては、2024年度と2025年度の適切なタイミングで行う、ヴィネット調査とサーベイ実験に対して主に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)