2022 Fiscal Year Research-status Report
Examination of support model across welfare and education for individuals with intellectual disabilities
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21K13480
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
下司 優里 流通経済大学, 社会学部, 准教授 (40615738)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 知的障害 / インクルージョン / 共生社会 / 教育・福祉横断的支援モデル / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は次の研究作業を行い、成果を得た。 ①分析課題に基づき、カナダにおける知的障害児者の社会的・教育的インクルージョンの変遷と現状を明らかにするため、カナダの知的障関係団体、研究機関、および行政機関等の系統的資料を入手した。 方法として、電子書籍・論文データベース、カナダの政府発表資料、史資料データベース等を利用して入手した。②①において入手された資料の分析・読解を行った。 その結果、 次のことが明らかとなった。 カナダで通常教育のなかに障害児教育を位置付けるようになったのは、ほとんどの州において1970年代から80年代のことであった。その足並みは必ずしも一致してはいないものの、現在では、すべての州・準州が特別な教育的支援を必要とするすべての児童生徒に教育を提供する法律または方針を採用している。なかでもオンタリオ州におけるインクルーシブ教育の導入と推進は、PPM119(1993年発行、2013年改訂)、および2012年の受容的学校法(Accepting Schools Act)に支えられている。 同州の障害児教育の現状として、以下の点が指摘できる。①インクルーシブ教育を掲げている、②いわゆるフル・インクルージョンではなく、特別な教育(の場)も残している、③7つの州立特別支援学校および特別支援学級を維持している、④通常学級での障害児の受け入れ、通級による指導を用意・充実させている、⑤障害のある子どものうち、特別な教育的支援を受ける子どもの割合は全国で最高。 なおカナダでは、就学前の幼児教育段階においても子どもの学びと発達についてカナダ全土で共有すべき事項の一つとして、「子どもやその家族の多様性を尊重することは、公正とインクルージョンにおいて不可欠である」との言及が見られるなど、インクルージョンの推進が掲げられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、前年度に引き続きCOVID-19の影響により、本研究の基礎的作業として予定していた現地カナダでの資料収集ができなかった。多くの史資料は研究代表者の所属機関で保管しており、また海外所蔵の資料や政府刊行資料も電子データでの入手が可能であったが、希少性と保存状態から貸借複写禁止の重要史料については、 現地カナダでの所蔵調査と資料収集が必要となる。こうした未収集の資料については、日本からの所蔵調査を進めつつ、カナダへの渡航が可能となり次第、現地調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は現地カナダでの在外研究が可能となった。そこで、前2年度でできなかった以下の研究作業を行う。 ①資料の収集:先行研究をもとに発見された資料のほか、知的障害問題に関する団体、研究機関および行政機関等の史資料を収集する。トロント市とオタワ市での調査・資料収集を予定している。②資料の分析・整理:分析課題を基に、資料の読解と分析を行う。また、マイクロフィルム等アナログ資料を整理・保管・利用するために電子データへ変換する。 加えて2023年度以降は、更なる資料の収集を行うと同時に、資料の読解・分析から得られた考察の妥当性の検証と研究成果の発表を行う。具体的には、以下の通りである。 ①資料の収集:研究対象時期の公立学校ならびに社会福祉施設の実態を把握するための系統的資料と、知的障害問題に関する中心的人物の著書・論文等を収集する。②資料の読解・分析:資料の分析を通して、当時のカナダにおいて知的障害者に対していかなる論説と処遇実態があったのかについて究明する。必要に応じて、トロントで関係分野の大学教授に研究に関する情報提供と助言を得る。③研究考察と妥当性の検討:考察の妥当性については、日本及びカナダもしくはイギリスとアメリカの当研究分野の研究者とのディスカッション等を通して検討する(北欧障害学会、米国知的・発達障害学会、カナダ社会学会等)。④研究成果の発表:これまでの研究成果については日本(日本特殊教育学会、日本社会福祉学会等)およびカナダ等において学会発表を行い、関係研究者の意見を求めるとともに、積極的に学会誌への論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度は前年度に引き続きCOVID-19の影響により、本研究の基礎的作業として予定していた、現地カナダでの資料収集ができなかった。そのため、使用予定額の大部分を占めていた海外旅費の支出がなかったことにより、未使用額が生じた。2023年度にカナダでの在外研究が可能となったため、こうした未収集の資料について現地調査・収集を行う予定である。
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