2022 Fiscal Year Research-status Report
神経発達症をもつ子の両親システムへの介入研究:マルトリートメントの援助にむけて
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21K13483
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
稲垣 綾子 帝京大学, 文学部, 講師 (70823178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アタッチメントベースドプログラム / 養育システム / アタッチメントニーズ / 青年期 / 家族療法 / マルトリートメント / 神経発達症 |
Outline of Annual Research Achievements |
青年期のメンタルヘルス不調が成人期以降まで長引く現象は国内外でみられ,実効性ある援助アプローチが火急に求められている。青年期の身体心理社会的な発達プロセスは複雑であるが、危機時に発動されるアタッチメントシステムは他者との相互作用の中でしなやかに柔軟に変化しうる特徴をもつ。そのため、親や周囲の大人が青年の言動の背後にあるアタッチメントニーズをセンシティブにキャッチし、応答していく好循環の相互作用を作り出していくことが重要となる。これは神経発達症をもつ青年のアイデンティティ発達を支える関係システムになりうるものである(稲垣,2022)。本研究では青年期の子どもに対する養育システムへの支援方策の実装を目的として、両親を対象とした青年と家族のアタッチメントプログラムの開発を進めている。 2022年度は、単一事例を対象にプログラムを実施し、プロトコル開発の精緻化を図った。トラウマインフォームドの観点からは、現在の夫婦のアタッチメントニーズについて検討するセッションの重要性は大きく、青年のアタッチメントニーズについてディスカッションする際にもこの検討が体験的な理解として役立ち、両親の話し合いを深める可能性がある。多世代的な文脈、ビリーフ、感情を共有するセッションについて見直し、プログラムならびにプロトコル内容の改良を進めている。 加えて、安全に本プログラムを実施する基盤を固めるため、両親とのセッションを進める上で必要となるセラピストの知識・技能・姿勢・見立てと介入のあり方についても検討し、マニュアルを改良・策定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大により、プログラム実施・完了までに時間を要した。しかし、単一事例についてじっくり検討すること、海外のアタッチメントベースドプログラムを参照することで、プログラム・プロトコル内容をトラウマインフォームドの観点から再吟味することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラム開発の基礎研究として、協力事例数を増やし、プログラムならびにプロトコルの改良を引き続き進めていく。さらに、協力セラピストによるプログラム実施の研究協力を通して、セラピストマニュアルを策定していく。本プログラム実施におけるガイドラインをまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策に伴う海外渡航の制限で、オンラインによる学会参加や会議となり海外渡航費が不要になった。しかし、オンラインによる学会参加や会議を実施し、青年期の子どもをもつ親へのアタッチメントベースドプログラムの主宰者である海外の研究者らとの交流を深め、マニュアル翻訳の許諾を得ることができた。青年期の子どもをもつ親プログラムは、世界的にみてもニーズは高いが、高いエビデンスレベルを取得したプログラムは少ない。また、トラウマインフォームドプログラムのあり方を学ぶことができ、本研究の青年期の子どもをもつ両親へのアタッチメントベースドプログラムの開発研究において欠かせないものとなっている。このマニュアルの翻訳費用に充てていく。
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Research Products
(3 results)