2021 Fiscal Year Research-status Report
レジスタントスターチ混合系食品の力学的・幾何学的特性および冷凍耐性に関する研究
Project/Area Number |
21K13491
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
島田 良子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (80739300)
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Project Period (FY) |
2021-02-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジスタントスターチ / ゲル / 物性 / 熱的挙動 / 粒子径 / デンプン / 小麦粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,レジスタントスターチ(RS)混合系食品の創製に向け,RS混合系ゲル(90℃加熱及び120℃加熱)の力学的・幾何学的特性,熱的挙動およびRS量の測定について解析を行った.RS には,ハイアミロースコーンスターチ(HACS),リン酸架橋タピオカデンプン(XLTS),置換度の異なるヒドロキシプロピル化タピオカデンプン(高置換; HHTS, 低置換; LHTS)の 4 種類を用いた.なお,RSの混合量は5%とした. 使用したRSを比較すると,HACSが粒子径は最も小さく,粒度分布幅は最も広かった.小麦粉単独の Control ゲルに比べ,RS を混合したゲルは軟らかく,付着性が低下する傾向にあった.また,HHTS, LHTS を混合すると,より軟らかく弾力のあるゲルとなった.さらに,90℃ゲルよりも 120℃ゲルの方軟らかくなる傾向にあった.デンプン粒の状態はHACS 混合ゲルではHACSのデンプンの結晶状態も保持されていたのに対し,XLTSは結晶状態が変化し始めており,HHTS, LHTSは完全に糊化していた.熱分析の結果,いずれの試料も吸熱ピークが56℃付近と85℃付近の2つ確認された.有意差はなかったもののXLTSとHHTSはピーク1のΔHが小さく,ピーク2のΔHが大きくなる傾向がみられた.また,XLTSはピーク2のピーク温度が有意に低下していた.これは,XLTSのピークが小麦粉のピーク2と重なってことが影響していると考えられた.RS 量は,HACS 混合ゲルが他のゲルよりも多く残存した.さらに,全体的に90℃ゲルよりも 120℃ゲルの方がRS量は多い傾向にあった. 以上の結果から,小麦粉水分散系において RS 量を増加させるには,HACS が最も有効であり,より高温で加熱することが有用であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はレジスタントスターチ混合系食品の創製に向け,レジスタントスターチ混合系の力学的・幾何学的特性,熱的挙動および機能性について解析を行う計画を立てた. 食品よりも加熱温度や加熱時間を調整しやすいモデル実験として,レジスタントスターチ・小麦粉混合系ゲルを作成し,次の5つについて解析を行った.当初より予定していた,①力学的特性:各種ゲルの破断特性(破断歪,破断応力,破断エネルギー),テクスチャー特性(かたさ,付着性,凝集性)測定,②幾何学的特性:(a)偏光顕微鏡観察,(b)走査型電子顕微鏡観察,(c) 粒度分布を測定,③ 熱的挙動:示差走査熱量(DSC)測定,④機能性:レジスタントスターチ含量の測定を行った.ゲルの調製条件としては,90℃加熱と120℃加熱を設定し,いずれも加熱時間は30分とした.水分散系においても加熱温度が高いゲルはレジスタントスターチ量が多いことを明らかにできたため,2021年度の目標はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はレジスタントスターチ・小麦粉混合系ゲルの冷凍耐性について検討する.使用するレジスタントスターチは,レジスタントスターチが多く残存じていたハイアミロースコーンスターチと冷凍耐性が認められているヒドロキシプロピル化デンプンの2種類とする.2021年度同様に90℃ゲルを調製後,-40℃で急速冷凍を行い,5日間-18℃で保存する.その後,解凍方法による違いを検討するため,急速解凍(電子レンジ)と緩慢解凍の2通りの解凍を行い,①力学的特性:各種ゲルの破断(圧縮)特性(破断歪,破断応力,破断エネルギー),テクスチャー特性(かたさ,付着性,凝集性)測定,離水率測定,②幾何学的特性:走査型電子顕微鏡観察,③ 熱的挙動:示差走査熱量(DSC)測定,④機能性:レジスタントスターチ量の測定を行う予定である. また,得られた結果は口頭発表および論文として発表を行っていく.
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Causes of Carryover |
物品購入は概ね予定通りであったが,2万円弱の残金が生じてしまった.また,外注分析費用として8万円計上していたが,共同研究先での測定が可能となったため使用しなかったため,次年度使用額が97,470円生じてしまった. 2022年度当初予算は物品費:50万円,旅費:7万円,謝金等:3万円,その他:10万円を予定している.次年度使用額の9.7万円はその他の論文校閲,投稿費用に充てる予定である.
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