2021 Fiscal Year Research-status Report
知覚の個人差を考慮した官能評価プロセスの構築―「濃厚感」を題材として―
Project/Area Number |
21K13497
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中野 優子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 研究員 (10827489)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 食品 / 官能評価 / 濃厚感 / 個人差 / 知覚 / おいしさ / スープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、個人の感性の違いが顕現しやすい食品の特性として「濃厚感」に焦点を当て、様々な品質評価に応用が可能な、知覚の個人差を考慮した官能評価プロセスの提示を目的とする。 2021年度は、まず、本研究で試料として用いる食品の選定を行った。濃厚感がおいしさに与える影響が大きいと考えられる種々の食品に関する文献調査と、試食による予備評価を実施した。その結果、様々な強度の濃厚感を呈し、性状をコントロールしやすく、濃厚感の知覚における個人差が大きいと考えられる試料食品として、市販インスタントスープが選定された。次に、市販インスタントスープを官能評価に供する際の試料調製条件や試料提示方法について検討・決定した。 続いて、15種の市販インスタントスープについて7名の分析型パネリストによる官能評価を実施し、濃厚感の強度評価と、濃厚感の評価に影響した要因の言葉出しによる抽出を行った。その結果、スープが呈する濃厚感の強さと関連しうる要因として、味や風味の強さ、味や風味の持続性、油脂、粘度、舌ざわり等が抽出された。また、これらの要因が濃厚感の知覚に及ぼす影響の程度は人によって異なることが明らかとなった。 さらに、15種の市販インスタントスープについて塩分濃度および粘度を測定した。その結果、塩分濃度や粘度は知覚される濃厚感の強さと必ずしも相関せず、濃厚感は複数の要因が複雑に影響して知覚されるものであることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、外部からパネリストを集めて試料の官能評価を行うことが困難な状況となった。そこで、感染拡大防止策を講じつつ、組織内のパネリストで構成される分析型パネルを用いて官能評価を実施することととした。結果として、10名程度での官能評価を予定していたところが7名での評価となり、実験の規模はやや縮小したものの、必要なデータ数は確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、市販インスタントスープを試料として分析型パネルによる分析型官能評価を実施し、濃厚感と関連しうる官能特性の強さを、ラインスケール等を用いて数値化する。また、一般消費者を対象とした小規模~中規模の嗜好型官能評価により、濃厚感の知覚の個人差に影響する要因について検討を行う。いずれも、新型コロナウイルスの感染状況などを考慮し、時期や感染拡大防止策について十分に検討しながら実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、外部からパネリストを集めて実施予定だった官能評価について、組織内部の分析型パネルを用いた官能評価に変更することとした。そのため、パネリストへの謝金が発生しなかった。また、出張による参加を予定していた学会発表等について、オンライン形式での開催に変更となり、想定よりも旅費の支出が抑えられた。 以上の理由により生じた次年度使用額については、次年度実施予定の分析型官能評価および消費者を対象とした嗜好型官能評価における謝金や試料調達費として使用する予定である。
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