2021 Fiscal Year Research-status Report
フキ属山菜の“化学分類”に着目した成分多様性及び健康機能性の統合的理解と応用
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21K13508
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
上杉 祥太 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 主任研究員 (30795901)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フキ属 / 化学分類 / 成分多様性 / 健康機能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
キク科フキ属に分類される山菜であるフキ・フキノトウは、機能性素材の原料として有望な機能性を有するが、“化学分類”と考えられる主成分の多様性があり、その実態が十分に解明されていない。そこで本研究では、フキ・フキノトウの成分多様性を把握した上で、主な成分を単離同定し、化学分類の全体像を解明する。さらに、国産のフキ・フキノトウ品種を対象とし、化学分類と機能性素材としての適性(健康機能性・安全性・呈味性等)を解明することを目的としている。本年度は、下記に示す結果を得た。 ・主成分の解明:フキノトウ約90コロニーの個体分析を実施し、主たるテルペノイドの種類による分類を行った。各ケモタイプの主成分の単離同定に成功し、化学分類の実態を把握することができた。また、国産のフキ・フキノトウ品種5つについて、主たるテルペノイドを明らかにした。 ・主成分が持つ機能性の解明:Bakkenolide BとPetasinについて新規な機能性を見出し、本年度それぞれ論文報告した。Bakkenolide Bは、ヒトT細胞Jurkatを用いて、アトピー性皮膚炎の炎症に関与するinterleukin-2の産生を抑制することを明らかにした。Petasinは、マウス脂肪前駆細胞3T3-F442Aを用いて、脂肪蓄積を抑制することを明らかにした。 ・ポリフェノールとアルカロイドの定量:自生のものと品種を対象に、総ポリフェノール含量とピロリジジンアルカロイドを定量比較した。総ポリフェノール含量についてはサンプル間で明確な差異が見られなかった一方、ピロリジジンアルカロイド含量には顕著な差が存在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、テルペノイドを対象とした単離同定と、それを標品とした成分分析を主に実施する計画であった。これまでに見出した化学分類を規定する主成分を全て単離同定し、機能性評価で用いる化合物を十分量取得することができた。また、自生90コロニーと品種5系統のフキノトウを対象に、化学分類を明らかにした。したがって、当初の目標を達成したと言える。さらに、次年度に重点的に実施予定であった主成分の機能性解析については、2報の論文公表に至っている。加えて、ポリフェノールとアルカロイドの定量についても予備検討を実施済みである。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に主たるテルペノイドの種類の判別が終了し、検量線を作成するための標品を取得することができたため、2年目にはHPLCまたはLC-MSを用いて定量的なデータを取得する。 機能性評価・解析については、計画していた項目のうち抗アレルギー作用は未実施であるため、機能性の有無とその作用機序を検証する。その際、単離した化合物だけでなく、抽出法を検討したエキスについても評価し、機能性素材としての可能性を調査する。 ポリフェノールとアルカロイドの定量については、テルペノイドを分析したサンプルと同じ個体を対象に、n=3以上でデータを取得する。 以上の研究を遂行することにより、機能性素材としての利用に適した成分特性の指標を確立するとともに、有望な系統を特定する。
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Causes of Carryover |
旅費は学会参加のために計上していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、参加予定であった学会がいずれもオンライン開催となったため。
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