2022 Fiscal Year Research-status Report
自然乳酸発酵による伝統技術が醸し出す「生もと系清酒」の特異的香気成分の解明
Project/Area Number |
21K13510
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Research Institution | Industrial Research Institute of Ishikawa |
Principal Investigator |
笹木 哲也 石川県工業試験場, 化学食品部, 研究主幹 (00504846)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 清酒 / 生もと / 香気成分 / GC-MS / SA-SBSE / 極性香気成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
「生もと系清酒」とは、伝統的な清酒醸造技術「生もと系酒母造り」で醸造した清酒であり、製法の特異性と複雑で濃醇な味わいから、近年注目を集めている。本研究では、生もと系清酒の複雑で濃醇な香味の原因物質を解明するため、生もと系清酒に特徴的な香気成分を明らかにする。前年度は、Solvent Assisted-Stir Bar Sorptive Extraction (SA-SBSE)-Gas Chromatography-Mass Spectrometry (GC-MS)が、生もと系清酒の極性香気成分の高感度検出に有効であることを明らかにし、Gas Chromatography-Olfactometry (GC-O)を併用することで、香気形成への寄与度が高い45の香気成分ピークを特定した。 本年度は、同じ酒蔵にて同一の精米歩合の酒米で醸造された3組の生もと系清酒と速醸系清酒を比較することで、生もと系清酒に特徴的な香気成分を明らかにした。具体的には、SA-SBSE-GC-MSで得られた45の香気成分データをOrthogonal Partial Least Squares 判別分析することで、生もと系清酒には極性香気成分が多く含まれることが示された。さらに、標準添加法による定量分析を行った結果、ethyl mandelate、ethyl 2-hydroxy-4-methylvalerateなどの極性香気成分やγ-6-(Z)-dodecenolactoneが生もと系清酒に多く含まれていることが認められた。極性成分は親水性を示すことから、清酒を鼻で直接嗅いだ時に感じる立ち香(オルソネーザルアルマ)よりも、口に入れたときに喉から鼻に抜けてくる口中香(レトロネーザルアルマ)に寄与するものと考えられる。生もと系清酒は複雑で濃醇な味わいと表現されるが、極性香気成分が多いことで、香気成分が作り出す特有の味わいを付与していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SA-SBSE-GC-MSにより、生もと系清酒と速醸系清酒を比較することで、生もと系清酒に多く含まれる香気成分を初めて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は同じ酒蔵で醸造された清酒の比較を行ったが、次年度は市場流通する複数の清酒製品の比較に着手する。
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Causes of Carryover |
次年度の複数製品の比較では内標準物質の検討が必要であることが分かったため、この実験の費用を次年度に使用する。
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