2021 Fiscal Year Research-status Report
「社会教育の無償性」を実現する社会教育財政の構築に向けた研究
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21K13523
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石山 雄貴 鳥取大学, 地域学部, 講師 (00804791)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会教育 / 無償性 / 社会教育財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した内容は以下の4点である。 1社会教育財政等の関連する先行研究の再確認を行い、研究を進めていく上での視座を検討した。社会教育財政研究の数は少ないものの、学校教育を中心とした教育財政研究は多く存在する。そこで、これまでの学校教育に関する教育費や教育条件整備、公共性、新自由主義的改革の影響等に関する議論の蓄積を確認し、その社会教育財政研究への展開可能性について検討した。さらに、社会教育行政研究について、特に社会教育に関する費用の公的支出を支える「公共性」や学習権保障に関する議論に着目し、研究蓄積を整理した。 2社会教育法制定時や1951年、1959年の社会教育法改正時における資料や関連する論文を収集している。収集した資料から、戦後公民館の出発点における公民館整備等の財政支出に関する制度や支出状況の他、財政支出について当時どのような議論がなされてきたかを確認し、戦後初期における社会教育財政のあり方を検討している。 3社会教育学研究者と共に無償教育研究会を開催した。研究会では、上の1について現在までに得ている知見についてまとめ、今後の社会教育財政研究の論点を議論した。議論を通して、直営による施設運営とその財政支出のあり方のみを検討するのではなく、指定管理者制度の導入が進む現状に即して、公設民営による施設運営の実態や厳しい地方財政状況の現実、入館料を設定し市町村立でありながらも独立採算で運営している公立博物館等の運営のあり方を勘案しながら、受益者負担論を乗り越えていく新しい方法を検討することが今後の研究課題として現れてきた。 4各市町村の公民館関連条例等の収集を開始した。収集には、部屋の利用料だけではなく、設備の利用や使用料減免基準に関する記述を含めて情報収集し、施設使用に関する私費負担の実態把握を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」における2と関わり戦後初期の社会教育財政に関する資料は収集してきているが、新型コロナウイルス感染症拡大への対応により国立国会図書館等での集中的な資料収集が困難であったことから、当初予定していた、1980年代以降の新自由主義的改革と社会教育財政に関する資料収集が不十分であり、研究実施計画に対して遅れが生じている。一方で当初次年度に予定していた各市町村の公民館関連条例等の収集を前倒しして開始し、その方向性も見えてきている他、次年度以降における地方財政や教育財政等の関連する文献の収集も開始している。さらに、「自治体戦略2040構想研究会報告」と学校統廃合に関する原稿依頼があり、社会教育行財政にも大きな影響を与え、受益者負担論にも繋がる新自由主義的改革の手法としての「自治体戦略2040構想研究会報告」について検討することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に沿った資料の収集と分析に遅れが生じているが、早急に取りまとめ、研究成果を公表していく。当初次年度に予定していた各市町村の公民館関連条例等の収集を前倒しして始めているが、引き続き公民館関連条例の収集を続け、使用料に関する記載事項等から私費負担に関する全国的な動向について分析を行う。また、その分析結果に基づき、中国地方の特徴的な自治体については現地調査を行い、有料制導入をめぐる経緯や導入背景にある市町村財政の状況等を分析する。これらの作業を通して、「社会教育の無償性」の実態を明らかにすることを目指す。こうした研究の経緯と成果は、論文等を通じて公表し、関連する社会教育学研究者とも共有していくことで、社会教育財政に関する議論を深めていく。
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Causes of Carryover |
社会教育行財政に関する書籍や資料の他、教育行財政や教育法学等の関連領域に関する幅広い文献検討を行ったため、物品費が想定額を上回るものになった。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で資料収集等に関する旅費支出が抑えられ、次年度に繰り越し額が生じた。 次年度は、中国地方を中心とした現地調査を予定している他、資料やデータ整理等のためアルバイトを依頼する予定である。それらの費用に使用する予定である。
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