2022 Fiscal Year Research-status Report
「社会教育の無償性」を実現する社会教育財政の構築に向けた研究
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21K13523
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石山 雄貴 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00804791)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会教育 / 無償性 / 社会教育財政 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した内容は主に以下の3点である。 1前年度から実施してきた社会教育における公共性と費用負担のあり方についてさらに検討を深めるとともに、前年度の無償教育研究会における検討を通して現れてきた研究課題に基づき受益者負担論の批判的検討を進めるために島根県松江市の公民館、ひの社会教育センター、長野県松本市の公民館への実地調査を行った。松江市では、各地区に組織された地区公民館運営協議会が指定管理者となり公民館を運営し、地区内の住民がその運営費の一部を「公民館協力費」として負担している。この「公民館協力費」の状況や「公民館協力費」を住民が負担することの意義、公民館運営の実態について把握するために公民館館長と市教育委員会職員へのインタビュー調査を行った。ひの社会教育センターは日野市と公益財団法人社会教育協会が共同で運営しており、その運営費用は公的支出である補助金とともに利用者からの受講料等が充てられている。この共同運営の経緯や実態、利用者の費用負担の実態や財政状況について把握するためにひの社会教育センター職員や社会教育協会関係者へのインタビュー調査を行った。さらに社会教育における公共性のあり方を検討するために、公民館実践の先進地である長野県松本市の公民館運営の実態について職員や公民館関係者へインタビュー調査を行った。 2前年度から引き続き、公民館における受益者負担の実態把握を目的として各市町村の公民館関連条例等の収集を行った。今年度で条例の収集作業はほぼ終わり、条例の整理、分析作業に着手している。 3前年度から引き続き、社会教育財政と関連する先行研究や前年度行うことができなかった1980年代以降の新自由主義的改革と社会教育財政に関する資料等を収集し整理する他、無償教育研究会を実施してきた社会教育研究者とともに公民館運営のあり方や社会教育財政、社会教育の無償性に関する議論を行い、助言を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」における1と関わり、実地調査を開始したが、調査回数が不足していたため調査により得られた情報から社会教育における公共性と費用負担のあり方や社会教育の無償性を検討するためにはまだ不十分であり、追加の調査を要する。また、前年度から各市町村の公民館関連条例等の収集を前倒しして行ってきたが、まだ整理・分析に入った段階であり、研究実施計画に対して遅れが生じている。一方で、「研究実績の概要」における3と関わり、得られた資料から研究の一部を書籍(共著)として取りまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画からは遅れが生じていることから、計画を練り直すとともに、得られたデータについては早急に取りまとめ、研究成果を公表していく。収集し終えた公民館関連条例をもとに使用料に関する記載事項等から私費負担に関する全国的な動向について分析を行い、「社会教育の無償性」の実態を明らかにすることを目指す。また、松江市公民館やひの社会教育センター等への実地調査を進めることで受益者負担論を乗り越えていく新しい方法を検討し、提示していくことを目指す。こうした研究の経緯と成果は、論文等を通じて公表し、関連する社会教育学研究者とも共有していくことで、社会教育財政に関する議論を深めていく。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、社会教育行財政に関する書籍や資料の他、教育行財政や教育法学等の関連領域に関する幅広い文献検討を行ったほか、文献を印刷するためのプリンターや実地調査に必要なレコーダーを購入したため、物品費が想定額を上回るものになった。一方で、実地調査の回数やアルバイトが不足したことで旅費や人件費が抑えらた。次年度使用額は不足していた調査旅費に充てる予定である。
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