2021 Fiscal Year Research-status Report
日本の公立学校における外国籍教員の実践と教育的役割に関する質的研究
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21K13528
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
薮田 直子 大阪成蹊大学, 教育学部, 講師 (00880105)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 外国籍教員 / 「任用の期限を附さない常勤講師」 / 多文化教育実践 / 多様性 / 「当然の法理」 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の公立学校には、多くの「外国籍教員」が働いているが、その実態は把握されないままである。かれら外国籍教員がどのような課題に直面しているかを、本研究は質的に明らかにし、その課題の克服の方途をさぐる。加えて、これまで不可視化されてきた日本の学校の民族的多様性や、外国籍教員たちの多様な教育実践に光をあて、日本の教育現場の多様性として再定義する。 現在日本の公立学校で働く外国籍教員は、その職を「任用の期限を附さない常勤講師」とされている。現行の解釈では、学校長などの管理職には登用できないこととなっているが、これらは、教員個人のキャリア形成という面だけでなく、慢性的な教員不足の中、必要な人材を必要な役割に置くことができないという教育現場全体の問題でもある。 異文化のルーツの児童生徒が増える中で、外国にルーツをもつ教員が果たす教育的役割はますます大きくなるだろう。今後外国籍者をどのように日本の公教育に位置づけるか、本研究の質的データが果たす意義は大きいと確信している。 本研究は、実際に日本の教育現場で働く外国籍教員を研究対象とするが、教員らの国籍に関するデータは公表されていないため、研究協力者との出会いが最も重要である。また国籍や出自は協力者のプライバシーに関わることから、研究倫理の遵守はもちろんのこと、調査者と協力者との信頼関係や、調査の透明性を重視する。そこで、調査者が実際に関わる民族教育団体のネットワークから協力者にアクセスし、信頼関係のもとで慎重かつ確実な質的調査を展開していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関西を中心とした外国籍・外国ルーツ教員のネットワーク、民族教育のネットワークや団体、関係のコミュニティでの活動や会議参加を計14回行うことができた。なお、9月には大阪市の民族教育関連団体でのシンポジウムにパネルディスカッションのコーディネーターとして登壇し、運営や議論を行った。 また同様のテーマを研究している研究者・実践者らとの自主研究会を2回開催した(うち1回は準備のための会議)。加えて2月には、2年目以降に計画しているインタビュー調査のパイロット調査を実施することができた。以上のことから「おおむね順調に進展している」として報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる次年度は、研究者・実践者らとの自主研究会を年間4回開催する計画であり、こうした機会を利用して調査データの整理、調査協力者とのマッチングなどを行っていく予定である。また継続して、民族教育団体での事務局員としての活動を月に1度行いながら、外国籍教員の常勤講師任用問題について見識を深めていく。 具体的な調査としては、インタビュー調査を本格的にすすめていく。既に6月に1名のインタビュー予定がある。本研究の課題は、自身の被差別経験や長年のキャリア、教育実践など分析項目が多岐にわたる。そのため一時的な一回限りのインタビューデータで到達できるようなものではない。何度もインタビューを重ねることで、より詳細なデータ収集をおこなっていく。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、新型コロナウィルス感染拡大を受けて、学会などがオンライン開催となったことで、出張が不要となり、旅費に係わる費用が不必要となったため。 また2021年度に予定していた各都道府県、政令指定都市の教育委員会への訪問調査も新型コロナウィルス感染拡大のため延期とした。また一部インタビュー調査の予定も次年度に繰越延期とする。延期された調査について、2022年度に実施可能性を検討し、再調整を行っている。
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