2022 Fiscal Year Research-status Report
International Collaborative Learning that Promotes Community Building and Social Inclusion between International Students and Local Residents - A Practical Research
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21K13532
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 遼子 東北大学, 歯学研究科, 講師 (30801295)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際共修 / 交換留学生 / インターンシップ / 社会的包摂 / 社会福祉 / 地域コミュニティ / 社学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「国際共修」(末松ら, 2019)に着目し、「留学生と地域住民とのコミュニティ形成を促す国際共修の教育的効果とその成功要因」の解明を目的としている。具体的には、大阪大学周辺にある2つの商店街での「インターンシップ実習」の授業(以下、本授業)を通して、①留学生と地域住民の交流が双方に与える教育的効果、②留学生と地域住民とのコミュニティ形成を促進する成功要因、③地域社会のインクルーシブな環境づくりの促進要因、について留学生と地域住民を対象とした面接調査を実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて解明する。さらにそこから、他の地域においても活用可能な要因を特定し、様々な文化的背景を持つ人々と地域住民との交流を促す国際共修モデルの提案を行う。 2022年度は、本研究の第二段階であり、②留学生と地域住民とのコミュニティ形成を促進する成功要因および③地域社会のインクルーシブな環境づくりの促進要因の解明のために分析を進めた。そこから、授業実践やインタビュー調査を通して、留学生と地域住民とのコミュニティ形成や地域社会のインクルーシブな環境づくりを促進するためには、「ブローカー」の存在が重要であることがわかった。ブローカーとは、「同時に複数のコミュニティに所属し、共同体を越えて新しいつながりを作り、コミュニティ間の交流を促進することで、実践を仲介し結びつける存在」(Wenger, 1998)のことである。インタビュー調査の結果、本授業におけるブローカーは、(1)ロールモデル、(2)パイプ役、(3)新しいアイディアの提供という3つの要素を持っていることが明らかとなった。今後は、地域の環境や地域住民との交流が、学生の学びにどのような影響を与えているのか、質的に分析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度も、春夏学期と秋冬学期の2回、対面で本授業を実施することができた。また、前年度よりも受講者の定員を増やし、各学期3名ずつ計6名の交換留学生が受講した。研究代表者は、所属先の変更があったが、招へい教員として引き続き本授業に関わり、オンラインによりほぼ全ての授業に参加し、参与観察を行うことができた。研究代表者だけでなく、2021年度にパンデミックにより来日が叶わず、本授業に参加できなかった学生もサポーターとしてオンラインで参加し、ほとんどの授業がハイブリッド形式で実施された。このように、インターンシップの新たな形態を試行することができた。学生の学びについては、学生のウィークリーレポートを読んでフィードバックを行うことで、彼らの考えや成長の過程を知ることができた。 また、毎週、地域受け入れ担当者と担当教員らが定期的にミーティングを行い、授業の教育的効果について議論を重ね、授業の改善を図った。さらに、2022年度は、本研究について国内外で3回の学会発表を行った。特に、タイのバンコクで開催されたAPAIE2023では、地域担当者と共に発表を行い、地域と大学の連携を深め、さらには地域と世界を繋ぐ機会となった。このように、「留学生と地域住民との交流を促す国際共修モデルの提案」を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、前年度同様に、受け入れ担当者や他の担当教員と協力しながら本授業の実践を行う。また、今年度の受講学生へのインタビューを引き続き実施し、さらなるデータ収集・分析を進める。データ分析の際、「越境的学習」(石山、2018)やTransformative Learning (Wandschneider, 2011)の理論を用いながら、インターンシップ実習の学びに関する研究を深める。また、「ブローカー」に関する知見を先行文献から集め、留学生と地域住民とのコミュニティ形成や地域社会のインクルーシブな環境づくりの促進におけるブローカーの役割や重要な点についてさらなる考察を行う。 今年度は、①留学生と地域住民の交流が双方に与える教育的効果について、各参加学生の内面的変容やコミュニティ形成過程を中心に、質的な分析を進める。そこから、②留学生と地域住民とのコミュニティ形成を促進する成功要因、③地域社会のインクルーシブな環境づくりの促進要因が、学生の教育的効果にどのような影響を与えているのか、についても詳細な分析を行う。最終的には、「留学生と地域住民との交流を促す国際共修モデル」の構築に重要な要因の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
・当初計画では、日本語および英語のインタビュー文字起こし謝金として「RA経費」を計上していたが、AI文字起こしアプリNottaを自費で年間契約(約1万円)したことと、所属先の変更により、RAを探すことが困難となり、RA謝礼を使用しなかったため。 ・「インタビュー謝金」を計上していたが、謝金支払いの手続き方法が、地域住民や日本の銀行口座を持たない交換留学生にとっては難しく、結局自費で支払うことになり、本科研から「インタビュー謝金」を使用していないため。 ・繰り越した分については、2023年度初めに「BEVI一年間1000回分」(約300,000円)を購入する手続きを進めている。また、英語校正費用のほかに、2023年6月にアメリカでの国際学会で発表の機会をいただき、その参加費と旅費にも使用する予定である。
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