2021 Fiscal Year Research-status Report
How education can support durable solutions to protracted displacement: Learning from experiences of Syrian refugees
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21K13539
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
ガラーウィンジ山本 香 上智大学, 総合人間科学部, 研究員 (70804053)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 難民教育 / 公教育統合 / 難民状態の恒久的解決 / シリア / 紛争 / 第一次庇護国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一次庇護国における難民状態の恒久的解決に向けた難民への教育提供のあり方を、シリア難民の視点から検討することである。1年目にあたる本年度は、第一段階として「いかなる環境のもとでシリア難民の恒久的解決と教育に関する意志が形成されているか」という問いに取り組んだ。 本年度の研究では、シリア難民の主要な第一次庇護国の中でもヨルダンに着目した。国際的には、難民支援全般の目標のひとつとして難民のホスト国における社会的統合・包摂が掲げられ、教育分野では難民の公教育統合が推奨されている。一方ヨルダンでは、大規模な難民受入の長期化に伴う援助疲れにより、難民の本国帰還に対する圧力が高まっている。しかし難民の現状を鑑みると、シリア国内の治安・社会経済状況への不安から、さしあたり第一次庇護国に留まることが最も現実的な選択肢となることが多い。この国際ドナー、援助国、難民の三者の間における恒久的解決への展望の乖離は、教育のあり方にも無関係ではない。ヨルダンではシリア難民の公教育統合が基本指針となっているものの、シリア難民生徒の過半数は、ヨルダン人生徒を午前、シリア難民生徒を午後に受け入れる二部制の学校に通っており、ヨルダン人/シリア難民の分断が可視化された状況で学んでいる。さらにシリア難民生徒が通う午後シフトは学習環境や指導の質が低いと見られており、シリア難民の視点からはホスト住民と難民との関係性が「中核」と「周縁」として捉えられる傾向にある。すなわち難民の社会的統合・包摂を目指す「公教育統合」は、その実際の施策によってはむしろ分断を招きうることが明らかになった。 以上の研究成果は、難民の公教育統合方針が表す実際上の多様性・多面性、さらにそれが難民の意志形成に及ぼす影響を示唆するものであり、公教育統合を難民教育の基本指針として扱う現在の国際的議論に新たな視点を提供すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」の通り、本年度に取り組むべき問いは明らかにすることができた。また、その成果は国内・国際学会での発表3件、ならびに編著書籍での研究論文1報として公表し、各専門的見地から有益なフィードバックを得た。今年度に予定していた現地での予備調査や、オンサイトでの学会活動等はCovid-19感染拡大に係る現地の状況や渡航規制により断念せざるを得なかったが、既存の現地調査資料やオンラインでの情報収集等を活用することで概ね当初の予定通りの進捗を果たしたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、本研究の目的を明らかにするため、次段階として以下2点の問いに取り組んでいく。 (1)シリア難民がいかなる恒久的解決を展望し、いかなる教育をいかに受容しているか。 (2)シリア難民が展望する恒久的解決に向けて、教育はいかなる影響を及ぼしているか。 次年度は現地調査の再開も視野に入れつつも、資料収集と既存のデータの分析を進める。その成果は今年度の学会報告後に得られた知見も踏まえ、引き続き学会発表等による成果の共有を行いながら、国際学術誌への投稿を目指す。
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Research Products
(4 results)