2021 Fiscal Year Research-status Report
現代ベトナムにおける大学制度の受容構造に関する実証的分析
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21K13543
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
関口 洋平 畿央大学, 教育学部, 講師 (90753640)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ベトナム / 高等教育 / 中等教育 / 大学入学者選抜 / 少数民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ベトナム高等教育において、高校から大学への進学ルートと学生の就学実態について大学類型間・地域間での比較的な検討を通じて、大学制度の受容構造を実証的に分析し、学歴社会のベトナム的特質について明らかすることを目的とする。こうした目的のもと、本研究は①国家社会主義体制期ベトナムにおける党の領導の実態と学生による大学制度の受容に関する検討、②ベトナムの大学進学における大学入学者選抜制度と学生の進学戦略に関するマクロな検討、それから③ベトナムにおける大学制度の多様化と受容に関するミクロな検討の3つの観点から検討を進める計画である。上記をふまえ、2021年度は大学制度の多様化と受容に関する研究として、高等教育機会の配分という視点から、ベトナムの大学制度の受容の実態について検討し、以下の2点を明らかにした。 第1に、ベトナムでは急速に学歴社会が進んでおり、進学を目的とする多様な教育機関類型が新たに設置されてきていることが明らかになった。具体的には、国内の有力大学への進学が容易な才能高校へと進学させることをめざして、卓越性を備えた教育機関として高品質中学校の設置が進められてきている。特に、都市部では高品質中学校に入学するために中学入試の熾烈な状況が確認できる。そこでは児童生徒は学業において「優れた児童生徒」と認められるため、学力のみならず道徳的側面である品行の評価が重視される。 第2に、ベトナムでは全体として教育熱が高まっている一方で、高等教育のアクセスには地域間の格差が存在していることが明らかになった。具体的にはベトナム全国の大学・短大就学率は30%を超えて高等教育はマス化段階にあるものの、例えば2016年度では、都市部では就学率が54.2%であるのに対して、農村部では17.6%に過ぎない。しかも、少数民族が多く居住する北部山岳地帯や中部高原では就学率は10%前後となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、すでに述べたように、2021年度から2024年度までの4年間にわたり、上述の①国家社会主義体制期ベトナムにおける党の領導の実態と学生による大学制度の受容に関する検討、②ベトナムの大学進学における大学入学者選抜制度と学生の進学戦略に関するマクロな検討、それから③ベトナムにおける大学制度の多様化と受容に関するミクロな検討の3つの観点から検討を進める計画である。初年度である2021年度にはこのうち③大学制度の多様化と受容に関するミクロな検討について研究を進めるとともに、本研究の基礎となるベトナムの学歴社会の特質の一端について明らかにすることができた。この点で、進捗状況については大きく所期の目標を達成することができたと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について、2022年度は主としてベトナムの大学進学における大学入学者選抜制度と学生の進学戦略に関するマクロな検討を、2023年度は歴史的な視点から、国家社会主義体制期ベトナムにおける党の領導の実態と学生による大学制度の受容に関する検討を進める予定である。ただし、コロナ禍の状況の緩和次第、ベトナムでの現地調査をおこない高校・大学相互の関係の実態について調査する。最終年度となる2024年度ではベトナム現地の大学や教育科学院の研究者と研究成果を共有し、現地での補完的な調査をおこなうとともに研究成果を総合することで、学歴社会のベトナム的特質を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の2021年度研究計画では、ベトナムに渡航し現地調査を遂行するための旅費を一定額計上していたが、コロナ禍が継続する状況のもと2021年度はベトナム現地調査をおこなうことができなかった。このため「次年度使用額(B-A)」が生じた。翌年度として請求するにあたっては、コロナ禍の状況下での渡航制限が緩和される前提のもとで当初活用する予定であったベトナム現地調査のための旅費として活用する。一方で、引き続きベトナムへの渡航が困難である場合、書籍購入のための物品費として活用することに加えて、ベトナム語文献を所蔵している日本国内の研究所・大学図書館での資料収集のための旅費として活用する計画である。
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Research Products
(3 results)