2023 Fiscal Year Research-status Report
現代ベトナムにおける大学制度の受容構造に関する実証的分析
Project/Area Number |
21K13543
|
Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
関口 洋平 畿央大学, 教育学部, 准教授 (90753640)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ベトナム / 高等教育 / 中等教育 / 高大接続 / 学歴社会 / 少数民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ベトナム高等教育システムに着目し、高校から大学への進学ルートと学生の就学実態について大学類型間・地域間での比較的な検討を通じて、大学制度の受容構造を実証的に分析し、学歴社会のベトナム的特質を明らかにすることを目的とする。具体的に本研究は①国家社会主義体制期ベトナムにおける党の領導の実態と学生による大学制度の受容構造に関する検討、②ベトナムの大学進学における大学入学者選抜制度と学生の進学戦略に関するマクロな検討、それから③ベトナムにおける大学制度の多様化と受容に関するミクロな検討の3つの観点から検討を進める。上記をふまえ、2023年度は大学入学者選抜制度と学生の進学戦略、並びにベトナム大学制度の受容について検討をおこなった。検討を通じて明らかになったのは、以下の2点である。 第1に、近年ベトナムでは地域間での相違があるものの、全体として学歴社会化が進む過程でとりわけ私的補習教育が加熱してきており、児童生徒の学習上のストレスや各種試験に伴う圧力を軽減させることが課題となっている。こうしたなか、2015年以降、ベトナムの大学入学者選抜制度では入試方法が多様化し、オンライン上での無制限の受験登録を通じて、受験生の進学可能性の向上が図られてきていることが明らかになった。 第2に、高大接続の関係性について、個別の大学及び専門高校(才能高校)での聞き取り調査からは、ハノイ国家大学教育大学など、在籍学生の出身高校は必ずしもパターン化できない一方で、ハノイアムステルダム高校をはじめとする専門高校では、その卒業生のおよそ半数が国外の有力大学に留学すること、残りの半数はベトナム国内の有力大学に進学する状況があることが明らかになった。加えて、企業設置型私塾大学であるFPT大学ハノイ校では、在籍者数の1割を少数民族の子弟が占めており、マイノリティに大学の門戸が開かれていることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は既に述べたように、①国家社会主義体制期ベトナムにおける党の領導の実態と学生による大学制度の受容構造に関する検討、②ベトナムの大学進学における大学入学者選抜制度と学生の進学戦略に関するマクロな検討、それから③ベトナムにおける大学制度の多様化と受容に関するミクロな検討の大きく3つの観点から検討を進める計画である。3年度目である2023年度では、この計画をふまえ、大学入学者選抜制度の改革の特質とベトナム高大接続関係の一端を明らかにするとともに、本研究全体の目的である学歴社会のベトナム的特質についてベトナム社会の実態や教育課題への対応という観点から切り込むことができた。こうした点から、「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策について、最終年度となる2024年度では、これまでの研究成果をふまえて、民族寄宿学校に加え、ハノイ市を中心とする専門高校(才能高校)、私塾高等学校の各類型の後期中等教育機関において、高大接続の状況並びに党の活動・思想教育の実態について明らかにする。そのうえで研究成果を総合し、学歴社会のベトナム的特質を考察する。
|