2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the role of infant crying in the persistence of depressive symptoms from pregnancy to the postpartum period.
Project/Area Number |
21K13548
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
平岡 大樹 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 研究員 (60894764)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 養育 / 周産期うつ / 乳児の泣き / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、妊娠中のストレス・抑うつ症状が産後まで継続するメカニズムについて、乳児の泣き声や発達との関連性から検討を行うことを目的としている。 まず、次年度から実施する、妊娠中の母親のストレスが子どもの泣き声の音響的特性に与える影響、および子どものDNAメチル化レベルの関与を検証する調査の実施環境を準備した。現在、倫理委員会に倫理審査を提出し、審査を受けている。倫理審査が終了次第、参加可能な妊婦を募集する予定である。 続いて、母親の抑うつ傾向と乳児の泣き声との横断的関連性を確かめるために、産後2か月の時点で乳児の泣き声を刺激としたfMRI課題および心理課題を実施し、50名の母親のデータ取得を完了した。その結果、抑うつ傾向と泣き声に対する脳活動の間に有意な関連性は見られなかった。認知課題成績に関しては、まず母親は自身の子の声刺激に対する注意バイアスを持つことが確認され、さらに抑うつ傾向の高い母親ほど、自身の子の声に対するバイアスが高いことが確かめられた。本研究の成果はすでに論文としてまとめ、現在投稿中である。 最後に、既存のデータベースの利用やコホート研究との共同研究を実施し、妊娠中のパラメータが乳児期・思春期の発達に及ぼす影響についても解析を実施している。ひとつには、米国で1万人規模で実施されているABCD Study (Adolescent Brain Cognitive Development Study)のデータ利用を申請し承認を受け、妊娠中の母親の大麻使用が思春期の子どもの認知課題の発達速度に及ぼす影響を見出した。さらに、千葉大学が実施する胎児期からのコホート研究(C-MACH)との共同研究を開始し、妊娠中の母親のストレスが産後の抑うつ症状を介して子どもの問題行動の生起につながることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠中のストレスと乳児の泣き声の特徴やDNAメチル化との関連については、当初本年度から準備・実施予定ではあったものの、新型コロナウイルスの蔓延による生体試料の輸送方法が従来より厳格化し、その対応が必要であったため、次年度からの実施とした。唾液の採取に使用するOrageneキットにSARS-CoV-2の不活化効果が報告されていたため、その他2次容器、3次容器との併用により唾液の遠隔収集が可能である段取りをつけた。すでに学内の倫理審査に提出を行い、参加候補者への接触方法も調査会社を通じて調整を進めており、実施の準備は整っているといえる。 また、横断的に母親の産後うつ傾向と乳児の声への注意バイアスを検討する研究を実施し、既に50名からデータを取ることに成功した。本研究の成果が学会で発表し、学術誌に投稿済みであり、順調に成果を得られているといえる。参加者の一部からは産前の抑うつ症状を取得しており、泣き声への音響特性に与える影響や、泣き声の音響特性とfMRI課題成績との関連など、追加の解析も実施可能な状況にある。 最後に、国内外のデータベース利用手続きや共同研究への参入を行えたことで、妊娠中の母親の心理・行動が短期的・長期的に子どもの発達に及ぼす影響を検討することが可能となった。各種既存のビッグデータの解析と、本研究課題の両輪を推進することで、当初の計画よりさらに重厚に研究課題の目的を検討可能となっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、現在所属大学の倫理委員会に申請中の研究課題が承認され次第、研究を開始する。具体的には、調査会社保有のモニタを利用し、研究が対象とする妊婦へ研究の告知を行う。同意を得られた参加者に対し、現時点でのストレスの評価、産後1か月時点で児の唾液と泣き声の録音の送付を依頼する。唾液からDNAを抽出し、Illumina Epicアレイを用いて、エピゲノムワイドにDNAメチル化を解析する。妊娠中のストレスが乳児の泣き声やDNAメチル化に及ぼす影響について、分析を行う。 また、University of DenverのKim博士との共同研究を開始する。当該研究室では妊娠中から産後までの母親を対象とした縦断MRI研究が現在実施されており、複数時点で唾液および泣き声に対するfMRI反応を取得している。次々年度、国際共同研究強化(A)を利用して研究室に滞在し、唾液からのDNAメチル化解析と妊娠中のストレス、泣き声に対する脳活動との関連性を解析する予定である。本年度はKim博士との打ち合わせを継続しながら、主に唾液の採取にかかわる部分のサポートを行う。 最後に、ABCD studyやCMACH等のコホート研究は現時点で進行中であり、C-MACHでは新規の集団の調査において、泣き声への反応を尋ねる項目の追加を計画している。妊娠中のストレスと産後の泣きへの反応、および短期的・長期的な児の発達についての関連性を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末の実験予定参加者の参加キャンセルにより,次年度使用額が発生した。次年度に当該分の参加者に改めて実験を実施する。
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Research Products
(1 results)