2023 Fiscal Year Research-status Report
知的障害・発達障害のある幼児を育てる両親のwell-beingに関する研究
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21K13563
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
勝浦 眞仁 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (60622488)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | well-being / 知的障害 / 発達障害 / わが子らしさ / ジョイント・インタビュー / 動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①IDD(知的障害および発達障害)のある幼児を育てる両親のwell-beingを構造化すること、②IDD児の親のwell-beingに関する我が国の独自性を明らかにすること、この2点を目的としている。 2023年度は、IDD児の両親のwell-beingを構成する要素の解明および構造化を試みた。保育場面の映像をIDD児の両親と一緒に視聴し、その場面をどのように受け止めたのかについて、非構造化インタビューを行った。 その結果、子どもの行動を安易に意味づけようとはせず、その姿を丁寧に読み取っていこうとして、「わが子らしさ」を探ろうとするプロセスが親に見られるとともに、親が受け止める「わが子らしさ」には両面性のあることが明らかになった。すなわち、IDDのある子どもならではの行動や特性としての「わが子らしさ」として理解しつつ、これまでの関係の歴史や日常の中で形成されてきた「わが子らしさ」として受け止めていることが見出された。 これらの両面が織り交ざりあいながら、「わが子らしさ」を探ろうとするプロセスがIDDのある子どもを育てる親にはあるとともに、両面性のあるがゆえに多様な側面における均衡や揺らぎが生じていることが示唆された。 このように、達成され、完成された最終的なゴールがwell-beingなのではなく、親のwell-beingにおいては、情動面の均衡がほどよく調整されたり、崩れたりしながら、動態として変容していることが明らかになり、親のwell-beingの形成過程の一端を明らかにすることができた。この観点から、IDDのある幼児を育てる親の支援を行っていくことの重要性が指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我が国における、IDDのある幼児を育てる親のwell-beingに関しては、ジョイント・インタビューを通して概ね構造化され、その形成過程のキーとなる「わが子らしさ」という概念の具体的様相を明らかにすることができてきた。 しかし、well-beingが高いことの指摘される北欧諸国(デンマーク・フィンランド)との比較・検討が十分にできておらず、我が国の独自性を見出すまでには至っていないため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、文献収集・検討を進め、北欧諸国でIDDのある幼児を育てている親のwell-beingを高めている環境等の要因についての検討を進めている。これらとこれまでの研究から見出された、IDDのある幼児を育てている親のwell-beingの構造を比較検討していく。 また、今後もこれまでのインタビューについての分析・検討を進めていくとともに、インタビュー可能なIDDのある幼児を育てている親がいらっしゃれば、研究協力をお願いし、インタビューの量を増やし、より精緻な構造化を試みる。 さらに、2025年3月にフィンランドで行われる北欧教育学会(NERA/NFPF)に参加および発表を行うことで、本研究の成果と課題を国際的見地から検討していくこととする。
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Causes of Carryover |
北欧諸国(フィンランドおよびデンマーク)への視察予定が上手くいかなかったため、次年度使用額が生じた。 2024年度については、2025年3月に北欧教育学会に参加および発表を行うため、その交通費・宿泊費等の旅費が必要となる。また、発表のための文献収集、英文校閲などの費用が必要となる。 また、日本における学会発表、文献収集、インタビュー等も継続して行うため、その費用がかかる。
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