2021 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の音楽教育実践にみる社会的統合装置としての校歌の役割
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21K13571
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
須田 珠生 立教大学, 文学部, 特別研究員(日本学術振興会) (70868702)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 音楽教育 / 唱歌 / 校歌 / 高等女学校 / 校歌 / 学校文化 / 教員配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる令和3年度は、各学校種の音楽教育実践が校歌に与えた影響を検討するため、戦前において、女子のための中等普通教育機関であった高等女学校に着目し、高等女学校本科と高等女学校実科における音楽教育の法令上の位置づけと実施状況を明らかにした。高等女学校では、音楽教育を行う学科目が設けられていたが、本科は「音楽」、実科は「唱歌」というように学科目名が異なっており、教授内容や教授時数、授業実施率にも大きな相違があった。戦前の中等教育機関において、法令上、授業のなかで「楽器」を扱うことが定められていたのは、唯一、高等女学校本科だけであった。一方、実科の「唱歌」は法令上、「欠クコトヲ得」とする学科目とされていたことから、本科の「音楽」に比べると授業の実施率が低く、教授内容も「歌唱」、すなわち、歌をうたうにとどまっていた。 また、各学校における唱歌教員・音楽教員の配置をとらえることを目的に、中等教科書協会発行の『中等教育諸学校職員録』を主な史料として、各旧制中学校と各高等女学校において、「唱歌」もしくは「音楽」の授業のみを担当する教員が配置されていたのか、あるいは、他学科目との兼任で「唱歌」もしくは「音楽」の授業を担当する教員が配置されていたのか、検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、新型コロナウィルスの影響により、出張をともなう史料調査が実施できなかったため、研究計画を一部変更せざるを得なかった。 しかし、これまでに収集した史料や、今年度、古書店などで収集した文献・史料を用いて、論文「高等女学校本科・実科における音楽教育 -位置づけと実施状況に着目して-」(『比較文化研究』第146巻、2022年、71-84頁)を執筆し、本研究課題を今後進展させていくうえで土台となる作業を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は研究計画に従い、学校や同窓会組織へのアプローチを通して調査を実施し、明治期から昭和戦前期における楽器の所蔵状況、年度ごとの教員配置、音楽活動の実態などを把握する。くわえて、旧制中学校と高等女学校の校歌収集に注力し、収集した校歌を歌詞と楽曲の双方から分析することで、両校種の校歌の特徴を明らかにしたい。
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