2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Pluralistic Learning Model to Form Communities of Practice for Teacher Education for ESD
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21K13574
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
柴川 弘子 岡山大学, 教育学域, 特任助教 (50875375)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ESD / 教師教育 / 実践共同体 / 多元型学習プログラム / 学習プラットフォーム / サービス・ラーニング / 探究学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はESDの教師教育の発展を目指し、ESDに取り組む教師の実践共同体を形成促進する多元的な学習プログラムのモデルの開発を目的としている。 本研究の対象は、ESDの学校教育への導入と生徒の成長を経験した教師たちにより発足された、自主的な学校間交流のネットワークであるが、調査を通じ、ESDの推進を担う教師の学び合いの場かつ教員養成の場として機能することが明確になった。申請者自身がメンバーと共に、ネットワークの学習プログラムの開発に取り組み、この過程を通じてメンバー教師らがESD実践者として力量形成され、実践共同体が活性化されるために有用な仕組みと仕掛け(プログラムの構造)が明らかになった。 まず、研究の第1段階として同ネットワークがESD実践共同体に資する相互学習組織として機能している可能性を、正統的周辺参加のプロセスの観点から教師らの語りを通じて捉えた。また、同ネットワークのインフォーマル・即興的かつ協働的な学びこそが、ESDを推進する教師としてのエンパワメントに結びつく可能性を捉えた。次に、従来型の学習プログラムの成果と課題に関して分析を行い、改善プログラムを提示し、実践した。 その結果、学習テーマ設定における高校生の主体性と参画の度合いを高め、学習内容の関連性を深めることや、卒業学生や教員志望学生を含めて、オンラインのプラットフォームで常時コミュニケーションを取れるようにすることで、教師らのエンゲージメントの度合いが向上することが明らかになった。 この多元型学習プログラム・モデルは、ESD推進を担う教師の育成は急務であるに関わらず、教員の異動・学校種間の差、研修の継続性などの問題が起きている中で、多元性が担保されつつ、持続的で発展的に教師を育むモデルとして、多くの教育機関や地域で援用可能であり、教師教育機関および教員研修機関にとっても有用なものとして提案できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、コアメンバー教員が異動となったことに引き続き、新たなコアメンバー教員を特定したものの、事情により研究協力が困難となってしまった。昨年度は、マレーシアの同様のESD教師教育や高大連携してのESD探究学習プログラムの開発に取り組む共同研究者らとの学び合いや、発表を計画しており、8月に実現できた。そこでコアメンバー教員は自らの実践の価値や意味について、よりグローバルな視点で考察を深めることができ、エンゲージメントの度合いも向上したことが看取され、有意義なものであった。一方で、先方の都合と擦り合わせながらの継続的な教師間の交流を実施することで、その学びをネットワークのプログラムに活かしていく予定であったが、調整が難しく、2024年2月に実施予定であった海外高校教員を含めた研修会の実施ができていない。また、今年度5月に計画していた新たなメンバー教員らとの国際・国内学会発表あるいは海外のESD実践校との研修会が、先方の事情もあり未だ調整中である。2024年度7月または8月に実施し、有効性を検証した上で9月のESDに関する国際学会にてモデルを発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後は、国際的な共同研究の度合いを高めていく必要がある。2022年から継続しているマレーシアとの交流は、多くの課題と共通点の発見があり、コアメンバー教員のエンゲージメントを高めるだけでなく、他のメンバーへの影響も与えており、同ネットワークの意味と意義をメンバーで考える上で、有効であったと考える。一方で、単発的な学習ではなく、継続的でより双方向的な深い教員間の学習が求められることも理解された。同ネットワーク内だけで完結してしまう学習プログラムではなく、それが「拡張」していくことや、絶えず「更新」されたり、新たな視点が入ってくるための仕掛け・仕組みづくりが必要である。また、ネットワーク参加校でそれぞれ実施している探究学習は、ともすれば前年度の踏襲であったり、地域創生に引き寄せられがちで、グローバルな視点や協働の経験が十分であるとは言い難いという課題が明らかになった。また、これまでの研究成果から、教員ひとりではなく、参加校におけるESDのホール・スクール/コミュニティ・アプローチの方法自体にも影響力を与えられるような学習プログラムに発展するためにも、やはりグローバルで大局的な視点が不可欠であると考える。よって、オンライン等を活用しつつ、国外の教師との繋がりを生み出せるような学習プログラムを導入していき、効果を検証していきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は国外で同様のESDの教師教育に取り組む大学(国際イスラミック大学マレーシア)に出向き、研修と視察を行う予定であったが、8月渡航時、出発地域の台風直撃により、乗り継ぎができなかったこともあり、計画変更を余儀なくされたこと、文献複写として計上していた予算等が不要になったことから、余剰が生じたため。
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