2021 Fiscal Year Research-status Report
東アジアの民話研究を生かした国語科学習モデルの開発
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21K13593
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
黒川 麻実 大阪樟蔭女子大学, 児童教育学部, 准教授 (50823382)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民話 / 国語教科書 / 教育文化史 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦前・戦後に教材化なされた東アジアの民話(昔話)には何があるか、また類話の関係にあたる民話にはどのようなものが存在するかを明らかにし、その内外にある教育的意図や思想を検討することである。その上で、日本を含む東アジアの民話教材をどのように子ども達が読み広げ、学びを深めていくべきなのかを追求する(国語科学習モデルを開発する)ことである。 1年目となる令和3年度は、①現時点における小学校国語科教科書に掲載されている民話(昔話)教材について調査し、現状および課題について明らかにすること、②国語科学習モデルの開発にあたり、どのような民話が学びの創造をもたらすのか調査すること、③植民地下にあった満洲および朝鮮半島においてどのような民話教材が存在したのかを明らかにし、それぞれの植民地においてどのような意図や思想のもと使用されていたのかを検討すること、以上の3点について研究を進めることができた。具体的には以下の通りである。 ①現在小学校で使用されている4社の国語科教科書における民話(昔話)教材の採録状況を調査し、戦後における採録状況との比較検討を行った。その結果、東アジアの民話教材の数が減り、地域が育んできた昔話を重要視する傾向があることが判明した。 ②民話の類型の1つである「異類婚姻譚」のうち、特に異類とヒトとの子が登場するものを取り上げ、どのような物語内容なのか、またどのような結末を迎えるのかを心理学的視点も用いながら検討した。異類婚姻譚は東アジアにも広く存在する民話であり、教材としての活用の可能性を見出すことが出来た。 ③植民地下の満洲・朝鮮における民話教材を体系化すると共に、特に共通して登場する民話教材について、各植民地下でどのような教育内容を展開しているのかについて比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、新型コロナウイルス感染者拡大の影響を受け、特に海外(韓国・中国)におけるフィールドワークによる民話の収集・調査は行えなかった。しかし、これまでに収集した文献調査やオンラインを活用した調査により、東アジアの民話に関する基礎的調査の遂行、分析については概ね進んでいる。また、研究実績のうち①・③(のうち植民地下における共通民話教材の分析)は学会発表にて、②・③(のうち植民地下の民話教材の体系化および内容分析)は論文という形で成果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる令和4年度は、引き続き東アジアの民話について網羅的収集・調査を行いたい。なお前年度に行えなかった韓国・中国におけるフィールドワークによる民話の収集・調査計画については、新型コロナウイルスの感染対策の状況を踏まえ、可能であれば実施したいが、調査が困難な場合には次年度に実施する可能性がある。 また、収集した民話教材について、通時的観点から変化の様相と派生状況、子ども達にどのように読まれていったのかを明らかにし、「教育文化史」として構築していく予定である。「教育文化史」の構築にあたり必要な資料については、社会情勢を踏まえ、国立国会図書館デジタルコレクションなどオンラインで可能な限り収集していく予定である。こちらについても可能であれば各地域への現地調査を行いたい。 調査や分析などの研究を通して、国語科学習モデルに活用できそうな教材価値が認められる民話(時代状況による変化の様相が明らかなるものや内外の教訓が考察対象として優れているもの)についても、いくつか候補を見つけ出し、どのような形で学習を展開していくか、模索していく。
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Causes of Carryover |
海外(韓国・中国)でのフィールドワーク及び文献収集等の調査を予定していたが、新型コロナウイルス対策の現状から海外渡航ができず、また学会発表についてもオンラインでの開催となり、申請していた旅費の使用が無かったため。令和4年度は、新型コロナウイルス蔓延の原状を踏まえ、可能であれば海外(韓国・中国)でのフィールドワーク及び文献収集等の調査に関わる旅費として使用したい。
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Research Products
(5 results)