2021 Fiscal Year Research-status Report
大学の財務基盤を支える金融サービスに関する基礎的研究
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21K13599
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 成一 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 学術研究員 (10898993)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高等教育の市場化 / 大学の資金運用 / 大学の資金調達 / 大学債 / 格付け |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の初年度にあたり、以下の調査研究を行った。 本研究の学術的独自性は、国公立、私立、株式会社立を含めたすべての大学の、現在の金融サービスの利用、活用状況を包括的に明らかにすることであるが、重要なことは、それを単に一覧性をもって調査分析するのみならず、それらを各大学の財務データと紐づけることにより、それが財務基盤構築につながっているのか、そして、それが経営組織体としての安定性、永続性を担保できるものになっているのかを、大学毎に分析し、その類型化を試みることである。その意味で、まず必要なことは、大学の財務データベース(パネルデータ)を構築し、主に貸借対照表、キャッシュ・フローを中心に財務分析を進めていくことである。しかしながら、外部ベンダーである東洋経済新報社が提供する財政データの完成・入手が遅れたこともあり、研究対象となる年度分をすべてカバーすることができず、基礎的な分析をするに留まった。 一方で、対象は国立大学に限定されるが、国立大学協会主催による「2021年度国立大学法人等担当理事連絡会議」(主に財務担当理事向け)において、『市場と向き合う国立大学法人の財務:資金運用と調達』をテーマに基調講演を行った。国立大学では、真の経営体となるべく、経営的裁量の拡大を可能とする規制緩和が断続的に行われてきたが、当該会議では、「市場(マーケット)」をキーワードに、その中で国立大学がどのようにして金融機関と付き合い、新たな財源を獲得している(いく)のかを、資金運用と大学債発行(資金調達)に焦点を当て、グループ別討議、パネルディスカッションを行った。そして、それに先立ち実施したアンケートの集計・分析結果から、いずれも国立大学の実権者レベル(に近い)、生の声を収集することができ、次年度以降のアンケート策定にあたり有益な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、本研究の初期段階で不可欠となる財務データの入手が想定以上に遅れたことにより(必要となる財務データがすべて揃ったのが研究期間初年度の終盤)、当該データベース構築・分析などが遅れ、初年度下期に実施予定としていた大学向けアンケートの設計に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年目においては、第1年目に作成着手した財務データベースをもとに、個々の日本の大学の財務分析の深堀りを進め、そこから得られた知見などをもとに、大学向けアンケートの設計を早期に進めていきたい。アンケート対象校は国公立、私立大学を中心に800校弱を想定し、アンケートを上期中に実施予定。下期以降は、アンケートの整理・分析を進め、各大学の財務状況とアンケート結果を紐づけることにより、次年度以降の研究の橋渡しを行い、中間報告として、必要に応じて学会での発表や執筆活動を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由は、大学における金融サービスの利用、活用状況を把握するためのアンケート設計と、当該アンケート実施が遅れたことにある。アンケート調査実施にあたっては、それに伴う郵送代や、アンケート回収後のデータ整理・入力作業に伴う人件費・謝金等を含み、その執行がなかったことが最も大きな要因である。
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