2023 Fiscal Year Annual Research Report
日本の宗教系大学における宗教文化の組織への組み込みと普及に関する組織社会学的研究
Project/Area Number |
21K13611
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and Quality Enhancement of Higher Education |
Principal Investigator |
齋藤 崇徳 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 助教 (80781541)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宗教系大学 / 宗教文化 / 組織社会学 / 組織論的制度主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の宗教系大学において宗教に関連する文化的制度がどのように組織に組み込まれており、どう普及してきたかを組織論の視座から明らかにすることを通じて、大学組織との文化との関係についての理論を発展させることであった。 本研究を通じて、具体的には以下に示す3点の成果が得られた。第一に、現代日本の宗教系大学の組織における宗教文化の基礎的データを得た上で、多くの宗教系大学には宗教文化を制度化する「運び手(carriers)」が存在することを明らかにすることができた。具体的には、宗教に関連する、各種の儀礼などの「象徴のシステム」、教会等の建造物等を意味する「人工物」、公式組織に埋め込まれた「反復的活動」という、宗教的文化を普及させる運び手が多くの大学において認められた。 第二に、「象徴のシステム」としての礼拝が戦後のキリスト教系大学においてどのように変化してきたかを明らかにすることができた。具体的には、戦後の大学の拡大にともなう非キリスト者の学生の増加と礼拝に反対する論理の形成、そして大学紛争期における大学批判とキリスト教批判の結合などにより、宗教系大学において礼拝をめぐる葛藤が起こっていたことが明らかとなった。 第三に、「人工物」としての大学キャンパスにおいて、とくに物質としての大学キャンパスやその建造物等が、どのように宗教文化を媒介してきたかを明らかにした。具体的には、物質に関する理論を基礎づけた上で、物質が大学のアイデンティティ、正当性、制度プロセス、葛藤を生み出してきた歴史を示すことができた。 以上の成果は、第一に、これまで看過されてきた文化というものの大学の公式組織における重要な要素であることを実証的に示し、第二に、高等教育研究、とくにその組織の研究においても文化的要素が重要であることを示したという意義を持つと考えられる。
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Remarks |
雑誌論文は掲載決定済。
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