2021 Fiscal Year Research-status Report
成人自閉症者の現実場面における過去の記憶と未来思考の機能の解明
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21K13626
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 健太 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00895542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 成人期 / 記憶 / 未来思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「成人ASD者が抱える問題は,過去の記憶や未来思考がもつ機能を活用できていないために生じているのではないか」という学術的問いに挑む。当該研究課題のレビュー論文を投稿準備中である。その中で,ASD者の未来思考については過去の思い出の記憶であるエピソード記憶の低下が未来思考の低下につながっていること,他者の意図理解に関する能力である心の理論や思考の切り替え/抑制などに関する能力である実行機能の低下も未来思考に影響していることが明らかとなった。 また本年度は年度途中に研究機関を異動したため,フィールドの開拓に努めた。具体的には神戸市内にある就労移行支援事業所や市内の小学校の先生方,附属特別支援学校と関係を構築することができた。 学術成果の発表では,自閉スペクトラム症者の想像の現実の区別に関する記憶の投稿をおこなった。また,感情のコントロールに関する研究が発達障害研究に採択された。この論文ではASD者の感情のコントロールの方略頻度について調べた。その結果,ASD者は出来事を再解釈し前向きに捉えるポジティブな方略の使用頻度が少ないことが明らかとなった。一方,感情にともなう言動の表出を我慢する方略については定型発達者と差がみられなかった。さらに,これらの感情のコントロールの方略と認知機能との間に関連はみられなかった。つまり,感情のコントールの困難さは認知機能で補えるわけではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新型コロナウィルスの影響で実験を実施することができなかったが,新たなフィールドを構築するための関係機関との連携に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染状況が落ち着いたときに実験が実施できるように,スピード感をもって計画を進めていく。一方,実験ができないことも想定し,アンケート調査など非対面で実施できる研究計画について検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスにより旅費を執行できなかったため次年度使用額が生じた。次年度は今年度揃えることができなかった実験器具の購入や対面開催される学会・研究会への参加などで予算を執行する予定である。
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Research Products
(4 results)