2023 Fiscal Year Annual Research Report
成人自閉症者の現実場面における過去の記憶と未来思考の機能の解明
Project/Area Number |
21K13626
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 健太 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00895542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / エピソード記憶 / 自伝的記憶 / 未来思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人自閉症者の中には,既存のアプローチで改善が認められない者が存在することから,新たな支援手法の構築が急務である。近年,自閉症者の過去の記憶や将来起こりうる出来事を想像する未来思考が注目されている。過去の記憶には,コミュニケーションの促進,適切な行動選択,自己一貫性の維持,感情調整などの機能がある。一方,未来思考には行動のプランニング,意思決定,感情調整,意図の実行などの機能がある。しかし,成人自閉症者を対象に,過去の記憶/未来思考の機能がうまく働いているかどうかは検討されておらず理解が進んでいない。そこで,本研究では成人自閉症者を対象に自己の主体的経験に関わる場面を想定し,過去の記憶と未来思考の活用のあり方を複数の研究から解明する。 過去の記憶に関する実験室実験と日常生活における未来思考の特徴について研究をおこなった。 過去の記憶に関する実験では,室内で物体の画像を覚える条件と屋外(オープンエア)で写真を撮って物体を覚える条件を設定した。定型発達者と自閉症者を比較した結果,屋内で物体の画像を覚える記憶成績に差はみられなかったものの屋外(オープンエア)で写真を撮って物体を覚える記憶成績は自閉症者に低下が認められた。これは,自閉症者の新規場面に対する想像力の困難や物体の位置関係を覚える関係記憶の低下が影響していると考えられた。 日常生活における未来思考の特徴については,頻度(回),現象学的特徴(視覚的イメージ,内言,感情,個人的重要性,自発性),未来思考の時間的距離(どの程度先の出来事か),思考目的(行動計画,安心,空想,意思決定),思考内容(仕事,余暇,人間関係,用事)を報告するよう求めた。その結果,頻度は平均50.54回/日で先行研究の定型発達者と比較して9回少なかった。また,思考目的では行動計画の割合が先行研究の定型発達者を比較して20%少なかった。
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