2022 Fiscal Year Research-status Report
「ヨコへの発達」の現代的意義ー重症心身障害児の「発達保障」の思想と実践から
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21K13633
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
垂髪 あかり 神戸松蔭女子学院大学, 教育学部, 講師 (00848947)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重症心身障害児 / ヨコへの発達 / びわこ学園 / 発達保障 / グループホーム / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、主に【研究3】実践的アプローチ:様々な場所で生きる重症児者の「ヨコへの発達」の療育・教育・福祉実践の事例的検討 を実施した。計画の中で事例対象としている、あ)びわこ学園入所者、い)グループホーム生活者に対して研究協力の依頼と同意を得、療育実践場面や生活場面の参与観察とインタビュー調査を実施した。 あ)では、びわこ学園医療福祉センター野洲の「びわこ大学校」の取り組みについて、定期的に参与観察し、重症児者と支援者とのやりとりについての情報を収集した。現在も定期的な参与観察を継続しており、2023年度には、支援者や、本取り組みの経緯を知る者に対してインタビュー調査を予定している。 い)では、びわこ学園のグループホーム「ケアホームえまい」を定期的に訪問し、生活場面の参与観察を行うとともに、利用者や職員との関係性を築いた。職員に推薦され、かつ同意の得られた利用者1名に、事例のライフヒストリーについて聞き取るインタビュー調査を実施した。また、この事例に現在主に関わっている職員1名と、過去に深く関わった職員1名にも、それぞれ事例のライフヒストリーについてのインタビュー調査を実施した。グループホームへの参与観察の結果は、第28回日本特別ニーズ教育学会自由研究発表にて発表した。インタビュー調査の結果については、現在整理している過程である。 【研究2】思想的アプローチ:現代社会における優生思想と「ヨコへの発達」思想との比較検討 については、びわこ学園創設者である糸賀一雄の思想について、特に重症心身障害児者に向けた糸賀の「まなざし」に焦点を当ててまとめ、日本特殊教育学会第60回大会自主シンポジウムにて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力先は重症心身障害児施設であるので、2023年度もコロナ感染拡大の影響を直に受けた。感染が拡大する時期は、施設への入所制限がかかり、施設に訪問することができなかった。そのため、インタビュー調査や資料収集の時期が大幅にずれ込んだ。資料収集の遅れについては【研究1】歴史的アプローチ:1960年代から2000年代における田中昌人の「ヨコへの発達」について解明 に大きな影響を及ぼし、【研究1】を計画通りに進めることができなかった。フィールド調査の遅れについては【研究3】実践的アプローチ:様々な場所で生きる重症児者の「ヨコへの発達」の療育・教育・福祉実践の事例的検討 に大きな影響を及ぼし、計画通りに進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染の影響による施設へ入所制限が解除されたので、【研究1】については、びわこ学園医療福祉センターの療育実践(「びわこ大学校」の実践)を事例に取り上げながら、田中昌人の史資料を、学園からも同時に収集し、田中昌人の「ヨコへの発達」についての情報収集、整理、分析を進めていきたい。この結果を、大学評価学会年報『現代社会と大学評価』第20号に投稿する予定である。 【研究3】実践的アプローチ:様々な場所で生きる重症児者の「ヨコへの発達」の療育・教育・福祉実践の事例的検討 については、2023年度に行ったインタビュー調査および参与観察の結果を分析、考察し、日本重症心身障害学会発行の『日本重症心身障害学会誌』に投稿する予定である。 【研究2】思想的アプローチ:現代社会における優生思想と「ヨコへの発達」思想との比較検討 については、現代の優生思想に関する資料収集が未着手の状態なので、資料を収集し、分析、整理する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、施設への調査研究が計画通りに進行しなかった。そのため、フィールド調査に係る費用が計画より大幅に減少した。また、開催予定だった学会等がオンライン開催となり、研究成果の公表のための費用(学会発表、それに係る旅費)が計画より大幅に減少した。 2023年度は、コロナによる規制が減少しつつあるため、フィールド調査の回数を増やし、結果の公表についても対面での学会発表を積極的に行うことで、交付された予算を計画通りに遂行するように努めていく。
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Research Products
(2 results)