2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a support system for generating university entrance examination questions utilizing a database of past exams and AI
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21K13636
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保 沙織 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (70631943)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大学入試 / 個別学力試験 / 作題支援 / 高校教員の認識 / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,個別大学における作題関連業務の負担を軽減し,良質な問題を効率的かつ継続的に作成するための作題支援システムを構築することである。研究実施計画においては,遂行すべき事項として(1)過去問データベースの作成,(2)AI技術を導入した予測・検索システムの構築の2点を挙げたが,作題支援の方法としては,大きく2つの方向性が考えられる。1つは,作題関連業務に必要な知識や技術を教授・共有することで,作題者の能力向上を図る情報的側面からの支援,もう1つは,作題のために有用なデータベース等を作成し,その活用により負担の軽減や作業の効率化を図る道具的側面からの支援である。先の(1)と(2)はいずれも道具的側面からの支援の具体策であるが,実際の運用まで視野に入れると,情報的側面からの支援と合わせたより包括的な「作題支援システム」の構築が求められる。 令和4年度は,個別学力試験に対する高校教員の認識を明らかにすることを目的とした研究を中心に行った。主要なステークホルダーであり,受験生に対する教育の担い手である高校教員が,個別学力試験の在り方をどのように捉え,改善に向けて何を望んでいるのか,その認識を知ることは,包括的な作題支援システム構築のための重要な知見となるだろう。全国の高校教員を対象とした質問紙調査の自由記述データを用いたテキスト分析の結果から,個別学力試験には,新学習指導要領を踏まえたより質の高い問題の出題が望まれていることが明らかとなった。また,教科・科目によって個別学力試験で測定が期待される資質・能力が異なることが示唆され,改善の必要性とその方向性に関しても教科・科目による違いが認められた。 上記の研究と並行して,令和4年度には過去問分析のためのデータを整理した。さらに,本科研による研究成果を公表するためのWebページを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個別大学における入試問題の作成は高度な秘匿性が求められる業務であり,それ故に,作題関連業務の一連のプロセスを明らかにした上で課題を特定し,具体的な支援方法について議論している研究はほとんど見当たらない状況であった。そこで当初の実施計画を見直し,この2年間は,個別学力試験の作題関連業務に従事する大学教員を対象としたインタビュー調査の逐語録データや,高校教員を対象とした質問紙調査の自由記述データを探索的に分析することで,作題支援システム構築の理論的基盤となり得る知見を収集することに専念した。 その結果として,過去問データベースの作成及びAI技術を導入した予測・検索システムの構築が当初の計画通り進められていないため,「やや遅れている」とした。ただし,自大学における個別学力試験の実施結果は,平成27年度入試から最新の令和5年度入試まで手元に蓄積されている。教科を「英語」に絞り,データベースに含める変数の選定を行うとともに,予測・検索システムの基礎となる分析を進めている。 また,昨年度に引き続き学内のFD(faculty development)を通して共分散比や相関比等に関する実データに即した解釈例を解説することで,作題に携わる教員が分析結果を正しく読み取り,次年度以降の作題に活かすことができるよう,情報的側面からの支援に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,先行研究による知見が十分ではないことを踏まえ,当初の実施計画を変更して最初の2年間は探索的研究に重点を置いたが,本研究の核心をなす作題支援システムの構築を可及的速やかに遂行する。 作題支援システムのプロトタイプ開発では,本学における一般選抜の英語の問題を取り扱うこととし,過去問データベースの整理を進めている。データベースにおける作図機能の搭載については,どこまで自動化できるか,利用するソフトウェアの選定も含めて現在検討中である。 データベースの整理と同時進行で,そのデータを用い,弱いAIの一部である機械学習の手法を適用して過去問題の分類や新作問題の予測を試みることで,AI技術を導入した予測・検索システムの構築を推し進める。 研究の過程ごとに,成果については日本テスト学会,日本教育工学会等で発表するとともに,論文としてまとめ,学会誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
過去問データベースの作成及びAI技術を導入した予測・検索システムの構築において,使用するソフトウェアや委託業者の選定に時間を要したことと,学会発表等がオンラインとなったことで旅費の支出がなかったため。令和5年度は,本格的に作題支援システムの構築に取り掛かるので,次年度使用額の中から大きな金額の執行が見込まれる。また,最終年度ということもあり,研究計画の推進と成果発表を精力的に行うため,対面で開催される学会等への参加を計画しており,旅費の支出も予定している。
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Research Products
(2 results)