2022 Fiscal Year Research-status Report
Scientific analysis of invisible technical tips in the dental treatment
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21K13639
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 拓実 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60846070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Technical Tips / 歯科治療 / 歯科臨床技能教育 / モーションキャプチャ / 窩洞形態評価 / Technical Tips |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科治療に用いる器具の持ち方や動かし方、それらを扱う際の姿勢は、その性能を発揮するために重要であるが、これらの具体的なコツ(以下、ITTs:Invisible Technical Tips)を、言葉や文章で第三者にわかりやすく説明することは容易ではない。本研究は、学習者である歯学部学生や研修歯科医の技術改善・向上に資すると考えられるITTsを客観的な指標を用いて示唆を与えることのできる歯科臨床教育体系の確立を最終目標とし、エアータービンを用いた切削の動作を題材に歯科治療動作を客観的に評価することを目指して行う。2021年度はフィンガーレストの有無による窩洞形成動作に関してデータの採得を行い、三次元動作解析を行った結果、診療姿勢やフィンガーレストの重要性を客観的に示すことができると考えられた。一方で、当初エアタービン操作に重要であると想定した上肢の関節、すなわち肩、肘、手首に加えて、手指による関与が大きいことが示唆されたため、2022年度は手指の動作解析についてモーションキャプチャでの計測方法と解析モデルの構築を行った。また2023年度の計画として、熟練歯科医師の動作解析から具体的なITTsを抽出し、これを学習者に教育することを予定しているため、単純な人工歯切削モデルの作成と、動画教材の作成を行い、これを用いて熟練歯科医師の動作の計測と解析を進めた。さらに歯科治療には動作だけでなく、器具や患部に加える圧力も重要な要素であり、このコントロール様式についても考慮する必要があるため、切削動作解析と並行して分析を行った。題材は比較的分析が容易と考えられる義歯の圧接時の圧力コントロールとしたが、切削動作でも人工歯に対する切削圧のコントロールは必須の技能であることから、重要な示唆が得られたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の目的としていた手指の動作解析について、3名の熟練歯科医師を被験者としてモーションキャプチャでの計測方法と解析モデルの構築を行った。当初の計画では熟練者の診療姿勢やインスツルメント操作の特徴、ITTsの抽出を行い、これを基に2023年度に学習者に指導を行うことで、教育効果の確認することとしていた。10名の熟練歯科医師の動作解析を目標として5名ほどの計測まで進んでいる。また歯の切削を題材として、切削バーの正確な操作を評価するための人工歯モデルの作成と動画教材の作成を行った。人工歯モデルは切削バーを単純な直線方向に並進させる技術を評価するものとして、この切削後の窩洞形態を3Dスキャナーを用いて評価することとして現在解析モデルの構築を行っている。また歯科診療時の器具や材料の使用方法には、三次元的な位置や姿勢による動作解析のみならず、器材や患部に加える圧力も重要であると考えられる。歯の切削においては切削バーに加わる圧力による摩擦の大小により切削効率が変化することや、インスツルメントの把持する指に対して筋活動量を多く割くことで、手指動作の巧緻性が低下することが考えれる。このことからまずは器材に加える圧力コントロールの様式について検討した。題材は先行研究がある握力のコントロールと近似した下顎義歯の圧接時の圧力コントロールとし、この圧力コントロールについて有用な知見が得られた。切削動作での圧力コントロールとは異なる点もあると思われるが、これに応用するための重要な示唆が得られたと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は熟練歯科医師の動作解析から得られたITTsを学習者に指導した際の教育効果について検討する。その際は計画当初想定していたインレーなどの内側性歯冠修復物の窩洞形成動作ではなく、より単純化した人工歯モデルの切削動作の指導と切削動作、窩洞の評価を行うこととする。このように当初の計画を変更した理由は、切削した窩洞をモーションキャプチャーの動作解析データと3Dスキャナーの窩洞形態データを併せて解析することで、切削中の切削バーの位置からその時点の手指や上肢の関節の姿勢を評価することができるため、動作中変化する上記の指標と動作後に評価する窩洞の形態により、ITTsの抽出においてより説得力のある指標や示唆が得られると考えたためである。学習者の指導については従来は切削結果である窩洞形態に対してフィードバックを行うことが一般的であり、切削時の姿勢やインスツルメント操作については行われてこなかった。また窩洞形態の評価も教育者が目視で判断して行っていた。本研究では学習者へのフィードバックは切削動作中の姿勢やインスツルメント操作と窩洞形態の評価を用いて行う。これを繰り返すことで、切削動作や姿勢、窩洞形態に変化がみられるかどうかを確認する。さらに切削動作中の圧力コントロールについても、重要なITTsがあることが考えられるため、上記の実験モデルとは別に新たな実験系を計画し、並行して分析を行うこととする。
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Causes of Carryover |
当初参加予定であった2つの学会がWeb開催であったため旅費が大幅に削減されたため、必要器材を追加購入したが、次年度使用額が生じた。2023年度は当初計画から追加された研究項目があるため、これに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)