2021 Fiscal Year Research-status Report
大学における人を対象とする非医学系研究の倫理指針と審査方法論構築のための調査研究
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21K13658
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 彩子 東京大学, ライフサイエンス研究倫理支援室, 特任助教 (10851454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 倫理審査 / 非医学系研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東京大学の複数の部局に設置されている倫理審査委員会で過去10年間に申請のあった研究計画の分析、委員会で審査を受けず実施された本学の非医学系研究の分析, 本学教職員・学生への倫理審査に関する意識調査および国内外の他機関との比較を通じ、東京大学の倫理審査委員会をモデルケースにして大学における非医学系研究の倫理的配慮および倫理審査の実態を把握し、現状の課題を明らかにするとともに非医学系研究の倫理指針・審査方法の一例を提案することを目的としている。 本年度は学内の教職員・学生へのアンケート調査を実施して、学内で実施された人を対象とする非医学系研究の実態分析および、倫理的配慮・倫理審査に関する意識調査を主に行った。 研究の実施にあたり倫理審査を受けるか否かの基準について実態調査を行った結果、非医学系の様々な研究分野において、最も重視されている基準が研究分野の潮流や学会・論文での成果報告時に倫理審査を求められるか否かであることが明らかとなった。また、研究者への意識調査においては、大半の回答者が研究倫理審査は「参加者の人権の保護・安全の確保のために必要」と回答している一方、「負担が大きい」と捉えていることが分かった。 次年度は引き続き学内での実態調査を行うと同時に、個々の学会における成果発表時の要件を調査することで、遵守事項をカバーしつつ研究者・委員の両方に負担の少ない倫理的配慮事項の確認方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初の計画通り過去に委員会で審査された研究計画の分析および学内の研究者を対象とした倫理審査の実態調査を開始することができた。過去の申請についての分類は概ね終了した。質問紙調査については統計的な解析を行うには回答数はまだ十分とは言えないため、次年度は回答に対するインセンティブを見直す、機縁法や講義の場で調査を周知する等回答数を上げるための工夫を行いながら引き続き質問紙調査を継続し、研究分野や研究内容ごとの解析を実施していく予定である。 一方で、年初に計画していた委員会委員への意識調査、あるいは本年度必要性が明らかになった学会が求める倫理的配慮の要件については実施が遅れている。質問項目の精査を急ぎ、迅速に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き学内の研究者を対象とした質問紙調査を実施し、委員会に申請されていない研究の実態を浮き彫りにする。研究内容や倫理的配慮、開始後に生じた倫理的な問題の有無について過去に申請された研究計画との比較を行い、大学での人を対象とする研究の全体像を把握するとともに、倫理審査が参加者の人権保護に資する効果を検討し、研究のリスクに応じた研究参加者への適当な倫理的配慮を整理する。同時に、研究者と倫理的配慮を確認している第三者機関である委員会委員・事務局の両方に対して、学内での倫理審査委員会に関する課題・要望を収集し、研究者・委員会の両方にとって負担が最小限となる委員会での審査方針・体制の構築を目指す。 また、本年度の調査で明らかとなった成果発表時に学会側より求められることのある機関内委員会での倫理審査について文系・理系の代表的な学会それぞれ10団体について質問紙調査を行い、様々な分野の研究や学際融合的研究が実施されている大学において整合性のとれた倫理指針を策定するため、学会で策定している倫理指針の有無や、投稿時に確認している倫理的配慮の要件を調査する。 上記の検討を行い本学における特徴を抽出し、ある程度倫理指針を開発した段階で、国内の他機関の研究者・委員会各10名程度に半構造的インタビューを実施し、全国的な共通認識が得られる基準を確立する方針である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で調査が遅れているため調査の謝礼として予定していた経費が来年度の使用となったため。加えて、国内での他機関を対象とした情報収集、学会での研究発表、論文投稿が次年度での実施となったため。
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