2021 Fiscal Year Research-status Report
「望ましくない行動を選ぶ自由」:自由意志信念およびその機能の再検証
Project/Area Number |
21K13666
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡辺 匠 北海道教育大学, IRセンター, 准教授 (80759514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自由意志信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体における大きな目的は、次の2つの問いを検証することであった。1.なぜ人々の自由意志信念(自分の思い通りに行動を選択できるという信念)はセルフコントロールを促進しないのか、2.自由意志信念が促進する機能は何であるか。このうち、初年度は1つ目の問いについて、実証的な分析をおこなった。具体的な仮説は、「人々の素朴な自由意志概念は(望ましい行動の選択だけでなく)望ましくない行動の選択もふくむため、自由意志信念はセルフコントロールを促進しない」というものである。一般成人を対象とした調査の結果、まずは過去の研究知見と同様に(Feldman, Chandrashekar, & Wong, 2016; Li, Zhao, Lin, Chen, & Wang, 2018)、自由意志信念とセルフコントロールの相関関係は弱く、尺度の種類によっては相関係数の値がマイナスになることもあった。次に、なぜ自由意志信念とセルフコントロールの相関関係が弱いのかという問いについて、行動の望ましさに関連した項目の回答を分析した。その結果、本研究の仮説と一致し、人々の素朴な自由意志概念は望ましくない行動の選択もふくむことが示唆されている。たとえば、「望ましくない行動は自由意志にもとづいている」や「自由意志と行動の望ましさは関係がない」という各項目に対する人々の回答平均値は、中点よりも有意に高いことが明らかになった。ただし、たとえば「望ましい行動は自由意志にもとづいている」という項目に対する回答平均値は先述の項目と同程度以上に高いため、自由意志と行動の望ましさは無関係とはかぎらないことには留意する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究では過去の研究知見を再現したうえで、本研究の仮説(人々の素朴な自由意志概念は望ましくない行動の選択もふくむ)と一致した方向での結果が得られている。そのため、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究では仮説と一致し、人々の素朴な自由意志概念は望ましくない行動の選択もふくむことが示唆されているものの、そこで使用している質問項目は一般的な傾向(一般的に自由意志は望ましくない行動の選択をふくむこと)を測定しているという課題が挙げられる。こうした課題に対し、次年度の研究ではたとえば、シナリオで望ましくない各種の行動を提示し、それらの具体的な行動に対して人々が自由意志にもとづくと判断するかどうかを分析する。このように、今後は本研究の知見の頑健性を調べるとともに、自由意志信念とセルフコントロールの関連についてさらなる検証をおこなう予定である。
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