2021 Fiscal Year Research-status Report
多様性の存在する社会における集団を超えた協力と共通の基盤形成プロセス
Project/Area Number |
21K13673
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
北梶 陽子 広島大学, ダイバーシティ研究センター, 助教 (10781495)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / 協力 / 罰 / ゲーミング・シミュレーション / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様性の存在する社会において、異なる価値観や規範を持つ集団に属する人々による集団を超えた協力の達成がもたらされるための過程で必要となる共通の基盤の形成要件を明らかにすることである。協力は社会に不可欠であり、集団への協力は社会に利益をもたらすが、個人のコスト負担を必要とする。現代において人々は規範や価値体系の異なる複数の集団に同時に所属している。規模の大きな社会において集団は入れ子構造となっており、協力の問題は個人と集団間の利益葛藤のみならず、上位集団の利益を優先することが下位集団の利益とならない、またはその逆の事態が生じうる。本研究では、特に罰の仕組みに着目し、上位集団への協力と下位集団への協力という複数の規範が存在しうる状況で、協力に関する規範が人々の間でいかに共有もしくは更新され、多様な価値や利害の葛藤を乗り越えた協力が成立する要件を明らかにする。 本年度は、ヒトの協力と罰に関する文献調査とデータ収集に用いるゲームの開発にあたった。データ収集に用いるゲームは、以前にテストを行っていたため、その際の浮かび上がった改善点の検討を行った。複数のオンラインツールを同時に用いるため、そういったツールを扱う技術の差がゲームでも現れてしまい、場合によってはゲームの進行が困難な場合があった。そこで、ゲームに用いるツールを変更し、ゲーム進行にも段階を設けることで全てのプレーヤーが滞りなくゲーム進行を行えるように調整を行った。こうした変更により、本研究で主眼を置くプレイヤー間の自由な相互作用が可能になったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、実験室実験を行い、罰の仕組みを操作した条件間で協力行動に与える影響の違いを検討する予定であったが、感染症の拡大もあり、実験室に多数の参加者を集めることが難しく、難航した。また、2022年度以降に実施予定のゲーミング・シミュレーションに関しては、修正を進めているが、そのテストを実施する環境を整えられていない。同様に、海面利用に関して、本研究の事例の一つとして、実際に対立が生じている地域を訪れ、聞き取り等の現地調査を行う予定であったが、感染症の影響を考慮し、実施できていない。こちらに関しては、文献調査やオンラインでの聞き取りなど、別のアプローチを検討する必要がある。しかし、検討中のそのほかの仮説を検討するための文献調査は着々と進めており、心理学、経済学、生物学、社会学、倫理学などの文献から、諸分野の協力に関する知見と最新の研究動向を踏まえ、学際的な発展が可能となるよう理論的枠組みの構築は進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験室実験に関しては、オンラインでの実施環境を整備し、プレテストの実施後、結果の確認、必要に応じた計画の見直しと修正、本実験を行う。本実験では約150名の実験協力者を募り、得られた結果を研究知見として発表の準備を行う。また、研究に用いるゲーミング・シミュレーションの開発に関しては、以前のテストで、参加者に対する指示や参加者間のコミュニケーションが不十分であるという問題点があった。この点を見直し、ゲーム構造とともに、オンライン環境下であっても参加者が戸惑うことがないようにシステム面および教示などの修正を行う。実験やゲーミング・シミュレーションは可能であれば対面で行い、ICレコーダーなどを用いて参加者の相互作用を記録したいと考えていたが、対面での実施が難しい場合には、オンラインでも実施できるよう、実施環境を整える。また、参加者だけではなく、ゲーム進行の補助者の負担や開発にかかる負担を考慮し、必要に応じて、ゲーム開発のプログラムの補助を依頼することも検討する。
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Causes of Carryover |
感染症の拡大により、予定していた実験室実験の本実験、ゲーミング・シミュレーションのプレテストを実施できずに、その参加謝礼が未使用となった。次年度以降に対面以外での実施を検討し、実験室実験とゲーミングを実施していく。
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